環境問題の解決が重視される昨今、再生可能エネルギーへの注目が高まっています。日本も例外ではなく、第5次エネルギー基本計画、2030年のエネルギーミックスにおいて、再生可能エネルギーの導入割合を22%〜24%とする目標が設定されています。これに対し経済同友会などでは独自に2030年目標を30%にすべきだとする報告書を国に提言するなど、様々な動きが加速しています。
このような動きが加速している影響で、再生可能エネルギーに関する補助金や優遇税制も増え始めています*。
*参照:エネルギー基本計画 – 経済産業省・資源エネルギー庁
今回の記事では、再生可能エネルギーの中でも蓄電池の導入に利用可能な補助金と、優遇税制をご紹介します。
目次
省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分)
「長期的な安定発電の促進」や「エネルギーミックスの実現」などに貢献する再生可能エネルギー設備を新しく取得した事業者に対して、税制上の優遇を行う制度です。
対象者
当税制の対象となるのは、下記の要件に該当しない青色申告書を提出する個人または法人です。
- 投資信託および投資法人に関する法律第2条第12項に規定する投資法人
- 電気事業法第2条第1項第9号に規定された一般送配電事業者
- 匿名組合契約等にもとづいて出資を受ける者
対象となる設備・要件
税制の対象設備は、「再エネ設備」と「付帯的設備」の2種類に大別されます。
再エネ設備には、木質バイオマス発電設備・熱供給装置や中小水力発電設備、バイオマス利用メタンガス製造装置、地熱発電設備が含まれます。
一方で付帯的設備には、蓄電池や風力発電関係設備、自営線が含まれます。
それぞれの設備には、クリアすべき要件が細かく規定されています。
例えば定置用蓄電設備の場合は、蓄電出力が、接続される再エネ設備の発電出力と比較して同等以下のものであることが要件です。
支援の内容
普通償却とは別に、取得価額の最大14%に相当する額の特別償却が認められます。
なお、固定価格買取制度との併用は認められるものの、国や自治体の補助金、他の税制優遇措置と同時に用いることはできません。
詳しくは資源エネルギー庁の「省エネ再エネ高度化投資促進税制(再生可能エネルギー部分)」を確認下さい。
学校施設環境改善交付金(うち太陽光発電等導入事業)
公立の学校に、太陽光発電設備等を設置するために必要な経費の一部を補助する制度です。
対象者
この補助金の対象となるのは、下記の団体です。
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 中等教育学校
- 高等学校
- 特別支援学校(幼稚部、小中学部、高等部)
- 共同調理場
※高等学校と中等教育学校(後期課程)は産業教育施設のみ
対象となる設備・要件
補助金の対象となる設備は下記の4つです。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 太陽熱利用設備
- 蓄電池
ただし蓄電池に関しては、単独で整備する場合には太陽光発電設置校に限られます。
支援の内容
要件を満たす蓄電池などを導入した際に、2分の1の補助率で算定された金額が支給されます。
※具体的な計算式は複雑なので、専門家に相談するか、資料を確認するのが無難です。
なお、固定価格買取制度との併用は認められています。
詳しくは文部科学省の「学校施設環境改善交付金交付要綱」をご確認下さい。
中小企業経営強化税制
青色申告を行っている中小企業が設備投資した際に、特別控除または税額控除を認める税制です。
対象者
この制度の対象となるのは、下記2つの中小企業者です。
- 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
- 資本または出資を持たない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人(受託法人を除く)
ただし「資本金または出資金の額が1億円以下の法人でも、下記の要件に該当する場合には中小企業経営強化税制を活用できません。
- 発行済株式や出資の総数または総額のうち、2分の1以上を大規模法人1社に所有されている
- 発行済株式や出資の総数または総額のうち、3分の2以上を複数の大規模法人に所有されている
- 受託法人である
※大規模法人には、主に資本金または出資額が1億円を超えている法人が該当します。
対象となる設備・要件
この制度の対象の「特定経営力向上設備等」とは、生産性向上設備や収益力強化設備、デジタル化設備を指し、事業における生産活動を構成する新品の機械及び装置、工具、器具及び備品、建物附属設備並びにソフトウェアで、下記のように一定の規模以上のものが対象となります。ただし、貸し付け用の設備は該当しません。
- 機械及び装置:1台または1基の取得金額が160万円以上
- 工具、器具及び備品:1台または1基の取得金額が30万円以上
- 建物附属設備:取得金額が60万円以上
- ソフトウェア:取得金額が70万円以上(コピーして販売するための原本や開発研究用のもの、サーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のもの等は除く)
また上記以外にも、販売開始から一定範囲内の年数しか経っていないことや、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれることなども条件として設定されています。
売電のみを目的とした設備は対象外
太陽光発電には、発電した電気すべてを売電する全量売電と、発電した電気を自家消費した余りを売電する余剰売電の2つの制度がありますが、全量売電は中小企業経営強化税制の対象になりません。
その理由としては、営利を目的とした太陽光発電は電気業に分類され、指定事業外となるためです。つまり、固定価格買取制度(FIT法)で全量売電をする設備は対象外となります。
しかし、FIT法を利用した余剰売電については対象となります。これは、余剰買電が営利目的だけでなく、設置施設のエネルギーコストを下げるためにも利用されるためです。よって、中小企業経営強化税制を受けられるのは自家消費か余剰売電となります。
ただし、余剰売電の内容によっては対象外となる可能性もあるため、最終的な判断は税理士や税務署への確認が必要となります。
*参照:中小企業経営強化税制 Q&A
支援額
この税制では、下記いずれかの支援を受けることができます。
- 即時償却:取得金額の全額を即時に経費化できる
- 税額控除:取得金額の7%相当額(特定中小企業者等の場合は10%)を税額から控除できる
※特定中小企業者等:資本金または出資金の額が3,000万円を超える法人以外が対象となります。
詳しくは国税庁の「中小企業経営強化税制」をご確認下さい。
その他の補助金・優遇税制
蓄電池の事業に使える補助金・税制は他にもあります。
上記以外では、下記2つの制度が役立つでしょう。
新エネルギー等のシーズ発掘・事業家に向けた技術研究開発事業
新しいエネルギーに関する技術を開発する企業に対して、研究や開発にかかる費用の一部を補助する制度です。
具体的には、事業の進捗度合いに応じて、6つのフェーズに分けて補助を行われています。補助金額は1,250万円〜4.5億円となっています。
応募の要件としては、大学等との共同研究を行っていることや、具体的な知財戦略を立てていることなどが設けられています。
フェーズによって要件は大きく異なるので、まずはどのフェーズにご自身の会社が該当するかを確認してみましょう*。
*参照:新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業 – 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
環境金融の拡大に向けた利子補給事業(地域 ESG 融資促進利子補給事業)
企業のCO2削減を促すESG融資に対して、利子の補給を行う制度です。
対象は各地域の金融機関であり、年利1%を上限に利子の支払いを補填します。
地域金融機関への支援を通して、SDGsや脱炭素社会の実現を目指す目的で当事業は行われています。
なお原資が国でない補助金であり、かつ都道府県や市町村が運営しているものであれば併用可能です*。
まとめ
一口に蓄電池に役立つ税制や補助金と言っても、対象者や支援の内容は様々です。
支援制度は多岐にわたるので、よく比較検討した上でご自身の事業に最適な補助金や税制を有効活用してください。