日本の温室効果ガスの排出量と削減への取り組み

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日本の温室効果ガス

地球の温暖化に影響を与える温室効果ガスについて、その大半は企業による産業活動に起因していると言われています。温室効果ガスの中でも最も排出量の多い二酸化炭素は、経済活動によるエネルギー需要によってその排出量が大きく左右されます。

そのため、世界中で温室効果ガスの排出量の削減について「省エネ」や「エネルギー転換」などのより積極的な取組・対策が求められています。

また、日本でも同様に、温暖化を防止するためにリユースやリサイクルなどのライフスタイルや消費行動の変化と、太陽光発電などの自然エネルギーの創エネが加速しています。そして、地球温暖化防止に向けて循環型社会・低炭素社会の実現が求められています。

温室効果ガスについて

地球温暖化の原因となる温室効果ガスには様々な種類があります。その中でも、地球温暖化への影響度は二酸化炭素が76.7%と、温室効果ガス全体の4分の3以上を占めています*。

また、「二酸化炭素は最も重要な人為起源の温室効果ガス」と言われています*。これは、二酸化炭素がエネルギー供給や輸送、住宅などの人類の生活、あるいは商業ビルや工場などの経済活動において発生していることに起因します。

*参照:2014年度IPCC第4次評価報告書

温室効果ガスへの対応

日本での温室効果ガスの排出は、その大半が産業活動に起因していると言われています*。だからこそ、エネルギー需要に左右される二酸化炭素の排出への、産業界の対応強化と消費者のライフスタイルの変革が求められています。

産業界に求められる温室効果ガスへの対応については、次章で解説します。一方で、企業として見過ごすべきではないのが消費者のライフスタイルの変革です。

消費者のライフスタイルの変革は、温暖化の防止には必須と言われています。具体的には、不要なものを買わずに再利用やリサイクルをする心がけ、移動手段を自転車やバス、電車などの公共機関に切り替える努力、自然エネルギーの取り入れや、節電や創エネへの積極的な取り組みです。

この様なライフスタイルの変革を実行する消費者が増加するということは、企業やそのサービスの選ばれる基準も変わることを意味します。つまり、地球温暖化防止に取り組んでいる企業かどうかという点が、企業を選ぶ基準として今後より重要になっていくことが予想されます。

*参照:全国地球温暖化防止活動推進センター「温暖化を知る」

パリ協定

パリ協定は、気候変動問題を世界中で取り組むべき重大な課題であると捉え、国際的な枠組みの中で対応していくことの合意として2016年11月に発効されました。

パリ協定で定められた世界で取り組むべき目標は、2つあります。
・世界の平均気温上昇を、産業革命以前と比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力を行う
・世界の温室効果ガス排出量をピークアウトさせ、21世紀後半に温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスをとる

これらの目標を実現させるために、パリ協定に合意した国は国内での計画の策定と国連機構枠組条約事務局へ5年ごとの実施状況の提出と更新が義務付けられています。

日本での取り組み状況

令和3年4月22日、日本は2030年の温室効果ガス削減目標を引き上げることを発表しました。引き上げられた目標とは、2030年度の排出量を13年度比で46%削減することです。

この目標は、菅総理が「野心的な目標」と言う通り、今までの目標を7割以上引き上げるチャレンジングな目標です。2019年速報値の排出量12億1200万tから30年までに7億9000万t以下に削減する必要があり、年間で約5000万tの削減を実現し続けることが求められます*。

*参照:首相官邸第45回地球温暖化対策推進本部

日本のこれからの5つの取り組み

2030年の排出量削減目標を実現するためには、具体的な施策を着実に実行することにより、経済と環境の好循環を生み出し、力強い成長を作り出していくことが重要とされています*。

具体的な施策として挙げられた事項は、以下の5つです。
①再エネなど脱炭素電源の最大限の活用
②投資を促すための刺激策
③地域の脱炭素化への支援
④グリーン国際金融センターの創設
⑤アジア諸国を始めとする世界の脱炭素移行への支援

これらの取組は、現在政府が具体的な内容をとりまとめ、今後提案がなされると予想されます。

*参照:首相官邸第45回地球温暖化対策推進本部

現在までの取り組み-日本の温室効果ガス排出の特徴『エネルギー起源CO₂』

エネルギー起源CO₂とは、燃料の燃焼や、電気や熱の使用によって排出される二酸化炭素(CO₂)のことを言います。このエネルギー起源CO₂が、日本の温室効果ガス排出量全体の約85%を占めています*。そのため、エネルギー分野でのCO₂削減が日本の最優先課題となりました。

*参照:『2019年度における地球温暖化対策計画の進捗状況

エネルギー分野における温室効果ガス削減の取り組み

日本で排出されるCO₂全体の4割は、発電によるものです*。そのため、エネルギー分野における温室効果ガス削減対策は、大きく2つの方針が取られています。一つは「エネルギー供給の低炭素化」であり、もう一つが「省エネルギー」です。

*参考:環境庁『2017年度(平成29年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について

エネルギー供給の低炭素化

日本のエネルギー供給の8割を化石燃料が占めています。そして、化石燃料はほぼ海外からの輸入で賄われている状況です。

エネルギー供給の低炭素化においては、CO₂を排出しないエネルギーとして、再生可能エネルギーの導入量の拡大が進められています。

そこで、日本では『非化石エネルギー源の利用拡大』と『化石燃料の高効率化による有効利用』を実現するためにエネルギー供給構造高度化法(エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律)が制定されています。

この取り組みの中で注目されているのが、非化石価値取引市場です。これは、非化石エネルギーで発電された電力の非化石価値を電気と分離して取引する市場です。この市場では、FIT制度の対象となる太陽光発電や風力発電などの「FIT電源」の非化石証書が取引対象となり、2018年から取引されています。

そして、2020年度から大型水力発電や原子力発電など全ての非化石電源も、非化石証書の対象となっています。今後、非化石エネルギーの利用促進が期待されています*。

*参照:経済産業省資源エネルギー庁『様々なエネルギーの低炭素化に向けた取り組み

化石燃料の高効率化

火力発電は、燃料を燃やす際に発生する水蒸気で蒸気タービンを回すことで電気を生み出します。この効率を技術的に高効率化させようというのが「化石燃料の高効率化」の取り組みです。

具体的には、以下のような最新鋭の技術が各発電所に導入されています*。

  • 超々臨界圧発電方式(USC)
    蒸気をつくる際に、極限まで高温と高圧にして蒸気タービンを回すシステム
  • コンバインド・サイクル発電
    高温のガスを燃焼させてガスタービンと蒸気タービンの両方を回すシステム
  • 石炭ガス化複合発電(IGCC)
    コンバインド・サイクル発電で利用される高温ガスを、石炭を利用して作るシステム

*参照:経済産業省資源エネルギー庁『様々なエネルギーの低炭素化に向けた取り組み

省エネ法

省エネ法は、事業者に省エネへの取り組みを求める制度です。これは、エネルギー資源の大部分を海外に委ねている日本のエネルギー効率の向上をはかるための法律です。

日本は、経済成長と同時にエネルギー消費効率を改善してきました。この改善の根幹をなすのが省エネ法です。省エネ法は、時代の要請に応じて改正され、現在の温室効果ガス削減への取り組みにおいても重要な役割を担っています。

*参照:経済産業省資源エネルギー庁「省エネ大国・ニッポン~省エネ政策はなぜ始まった?そして、今求められている取り組みとは?~

まとめ

今回は、温室効果ガスの排出量の削減を継続している日本の取り組みや、今後の動きについてまとめました。今後も2030年や2050年に向けて、温室効果ガスの排出量削減に向けた施策や取り組みが加速していくことが予測できます。

事業者には、省エネへの取り組みや再エネへの利用など、身近でできることからの取り組みが求められています。

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