日本の一歩先を行く、ドイツ、カナダの再生可能エネルギー事情

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パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)が目指す脱炭素社会の実現が求められる中、各国はそれぞれの地理的特性などを活かした再生可能エネルギー開発に努めています。そこで注目されるのは、再エネ先進国の取り組みです。この記事では、欧米の中でもドイツとカナダにフォーカスし、両国の再エネ事情を解説します。

世界の再エネ動向

再生可能エネルギー(以下、再エネ)は環境に優しいだけでなく、経済的でもあるという理由から世界で普及が進んでいます。一方で日本でも再エネの普及を促進していますが、石炭火力への依存など、批判の対象にもなっています。

2017 年過去最大を記録した世界の再エネ導入量

再エネは世界でどれだけ普及しているのでしょうか。

経済産業省資源エネルギー庁によれば、世界全体の再エネによる発電設備の容量は2014 年に1,835ギガワットだったものが、2017年の推計では約2,337ギガワットまで増加しています。この結果、世界の再エネ導入量は過去最大を記録しました。

再エネが2014年以降一貫して成長を続けている一方、非再エネ電源である、「石炭」「天然 ガス」「石油」「原子力」はほとんど成長していません。世界的に見ても再エネが今後の「主力電源」になることが予測できます。

出典:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案2019年9月 – 資源エネルギー庁

欧米主要国・中国よりも低い日本の再エネ比率

続いて世界の主要国における再エネ導入状況を見てみます。

2017年、日本の再エネ比率は16%で、水力を除くと8.1%になります。欧州主要5ヵ国、 アメリカ、中国の中で最も低い値を示しており、再エネの導入に関しては世界から遅れつつあると言えるでしょう。

一方で、再エネ率65.6%と圧倒的な数字を誇るのがカナダです。この再エネ率の高さをけん引しているのが水力で全体の59.9%を占めています。また、欧州の中では、イタリアとドイ ツが高い再エネ率を実現しています。

出典:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案2019年9月 – 資源エネルギー庁

ドイツより10年遅れた日本の再エネ政策導入時期

日本の再エネ導入が後れが見られる理由は、電力自由化が欧州などと比較して約10年遅れたからだと考えられます。EU(欧州連合)では1996年以降、欧州域内単一市場の実現に向けて電気事業制度改革を実施してきました。ドイツが電気小売の全面自由化をしたのは1998年のことです。

また、電力自由化と共にドイツのエネルギー政策に影響を与えたのが気候変動問題です。

2000年頃からゼロエミッション電源として再エネが注目されました。再エネは燃料費が発生せずに大量導入でコスト削減が可能、長期的には初期投資の回収がしやすい電源と期待されました。こうした背景から再エネの導入を政策的に進めていったのです。

一方日本でも電力自由化については、1995年以降に制度改革が行われてきました。

しかし、「一気に自由化すると混乱が起きる」という理由から段階的に自由化が進められ、完全自由化に向けた「発送電分離」(電力会社の発電事業と送電事業を分離すること)が完了するのは2020年、今年に入ってからの予定です。

再エネ先進国ドイツの取り組み

ドイツは、脱原発、石炭・褐炭火力を廃止して再エネに大きくシフトし、欧州の再エネをけん引しています。ドイツの再エネ動向を見ていきましょう。

2000年に「固定価格買取制度」(FIT)を導入

ドイツでは再エネ開発を推進するため、2000年に「再エネ開発促進法」を制定しました。これにより再エネを20年間、同一価格で買い取ることを保証するという、「固定価格買取制度」 (FIT: Feed in Tariff)が導入されました。

当初、再エネは発電設備や維持にかかるコストが高い上、発電効率も悪く普及しませんでした。

しかし、発電エネルギーを高価買取によって参入事業者は増加しました。この結果、特に陸上風力は1990~2016年の間に約800倍に増大しました*。

*参照:3. 再生可能エネルギー導入政策・動向 – ドイツの電気事業 – 電気事業連合会

太陽光発電コストは日本の半分、カギは建設工事費の違い

経済産業省資源エネルギー庁によると、世界では太陽光発電・風力発電を中心に再エネのコストが低くなりつつあります*1。

出典:国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案 2019年9月 – 資源エネルギー庁

特に太陽光発電の価格は世界的にかなり低下しています。日本もコストは年々下がってきていますが、世界的に見れば高値圏で推移しているといえます。2014年、地上設置型の太陽光発電の価格は2.5ドル/ワットであり、ドイツに比べると2倍近い価格差があります*。

* 参照:国内外の再生可能エネルギーの現状と 今年度の調達価格等算定委員会の論点案 2019年9月 – 資源エネルギー庁

日本の太陽光発電はなぜ高いのでしょうか。 原因の一つは建設工事費や太陽光パネルのにあると言われています。

日本の太陽光パネルの7割を占めているのが日本製である一方、ドイツでは、ドイツ企業のもの以外にも中国製・台湾製の製品も大きなシェアを持っており、競争が起こっていると考えられます。割安な中国・台湾企業製に合わせて、ドイツ製も同等のコストで提供されています*。

* 参照:日本の太陽光発電はなぜ高いのか – 自然エネルギー財団

また、太陽光発電の施工期間について大差があることもわかっています。

日本では、ドイツに比べて2~7倍の工期がかけられています。施工期間が長ければ長いほど、建設工事費が高くなります。ドイツでは施工期間の最適化に力を入れることによ工期の大幅な短縮を実現しています。

2030年に50%の再エネ比率目標を掲げている

日本は、「エネルギー基本計画」に基づくエネルギーミックスを再エネ戦略としており、再エネ目標を2030年に22~24%と設定しています。対して、再エネ先進国であるドイツの目標 は、2025年に40~45%、2035年には55~60%です*1。

日本が2030年に目標を達成したとしても、その時点で既に約2倍、もしくは更なる差がついていることも考えられます。将来を見据え、世界中でエネルギーシフトが進む中、日本が 再エネで世界水準に追いつけるかどうか、他国もその様子をうかがっていることでしょう。

*1 参照:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案 2019年9月 – 資源エネルギー庁

再エネ先進国カナダの取り組み

次に、豊富な自然環境を活かした水力発電により安定した電源供給を誇る、カナダの再エネ動向を見ていきます。

水力発電に強み、世界トップクラスの再エネ比率を誇る

日本でも身近な再エネと言えるのが水力発電です。とはいえ、前述のデータによると発電供給量の割合では10%にも満たず、水力発電が盛んなカナダには足元にも及びません。カナダ の再エネ比率は世界トップクラスで65.6%もあり、そのうちのほとんどが水力です。

カナダには起伏が激しく発電に使える河川が多く、水力発電がしやすい環境にあります。

2015年の発電量を州別にみると、ケベック、オンタリオ、アルバータの3州で全体の約7割近くを占めており、世界三大瀑布の「ナイアガラの滝」(オンタリオ州)にも水力発電所があります。世界最大の電力供給源として、国内はもちろん、アメリカでも電力が活用されて います*。

*参照:1. エネルギー政策動向 – カナダの電気事業 – 電気事業連合会

電気料金が安いのは世界有数のエネルギー資源国だから

そもそもカナダはエネルギー資源国であり、石油、天然ガス、石炭、ウランなどが豊富にあります。また、近年はシェールオイルやシェールガスの開発も盛んです。2015年のエネルギ ー自給率は世界第2位の171.8%で、エネルギー輸出国でもあります。日本は6.15%でした。

出典:主要国の一次エネルギー消費構成と自給率|データ集| – 一般社団法人 海外電力調査会 (JEPIC)

エネルギー資源を輸入に頼らず自国でまかなえるため、電力が安定しているうえ、電気料金も安くなっています。なお、カナダの電気料金は各州によって異なり、ケベックやアルバータなど水力電源の多い州が特に安くなっています。

各州の自立性任せ、連邦政府による再エネ導入目標なし

カナダは日本と異なり、エネルギー政策は連邦政府ではなく、州政府が権限を持っています。 これは、カナダではエネルギー資源の所有権は州にあるためです。

州政府が電気事業や再エネ政策を決めるため、国レベルでのエネルギー政策に関する法規はなく、再エネの導入目標も存在しません。各州が自主的に策定しています。

水力を除いた国内の発電量に占める再エネの割合は、2017年で6.0%となっており、そのほとんどが風力発電です。また、太陽光発電の導入も増加しています*。 カナダ政府の後押しが十分と言えない中でも、オンタリオ州を筆頭に各州が再エネに取り組み効果を出していることは賞賛に値するのではないでしょうか。

*参照:カナダ|データ集| – 一般社団法人海外電力調査会(JEPIC)

まとめ

欧州、その中でもドイツにおける再エネの取り組みは非常に積極的で、日本人が想像する以上に進んでいます。また、資源大国でありながら、再エネ大国の側面も持ちつつあるカナダ の状況も、再エネ戦略の道半ばにある日本にとって大いに刺激になるでしょう。

一方、あまり知られていませんが、日本は太陽光発電の設備容量で中国、アメリカにつぐ世界第3位になります。この太陽光発電導入の増加傾向は続いており、再エネ利用は普及しつつあります*。

*参照:REN21「自然エネルギー世界白書2020」公表:自然エネルギーの進展は電力分野に限られる – 認定NPO法人環境エネルギー政策研究所

電源の安定供給という大前提を満たしつつ、各種の制約がある中でどのように再生可能エネルギーの導入を増やしていくか、常に議論し、考えていく必要があるでしょう。

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