サプライチェーンに迫る再エネの波!AppleのSupplier Clean Energy Programと日本企業の取り組み状況

iPhone-サプライチェーンREアクション
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米国Apple社が牽引するのは、もはやコンピュータやスマホ、Apple TVなどのイノベーティブな製品群だけではありません。CEO(最高経営責任者)であるティム・クックはこう述べています。

自分たちが生まれてきた世界を、さらに良いものとして次世代へ残すことに全力で取り組んでいる

再生可能エネルギーで 世界的に自社の電力を100%調達 – Apple

Appleの再エネ導入への本気度は凄まじく、2015年にはサプライヤーを巻き込むサプライヤークリーンエネルギープログラム(Supplier Clean Energy Program)を立ち上げました。サプライチェーンを巻き込むこの動きはAppleだけにとどまらず、日本企業も含め多くの企業で始められています。

サプライチェーンを巻き込む再エネの動きは、中小企業を含む多くの企業にとって、今後の取引の拡大や深化を図る上でとても重要なポイントになるでしょう。

今回の記事では、Apple社のサプライヤークリーンエネルギープログラムの内容やそれに追随する日本企業の動きについて解説しています。

Appleのサプライヤークリーンエネルギープログラムとは

米国Apple社(以下、Apple)は、再エネの導入に積極的に取り組んでいるグローバル企業の1つです。2018年には、全世界の事業活動で使用する電力を再エネ100%に切り替えることに成功しました*。これには世界43カ国にある直営店からオフィス、データセンター、共用施設まで含まれます。

*参照:Apple、 再生可能エネルギーで 世界的に自社の電力を100%調達 – Apple (日本)

そして、Apple社は再エネ導入の動きをサプライチェーンにまで拡大しました。それが2015年に立ち上げた「サプライヤークリーンエネルギープログラム」です。

世界各地のサプライヤー(仕入先や供給元、納品業者など)に対して、Apple社向けの生産活動に再エネを利用するよう呼びかけるもので、2020年に4ギガワットの電力を再エネで調達することを目標として始まりました*。

*参照:Supplier Clean Energy 2020 updated – Apple

2020年目標のサプライチェーン再エネ100%を1年前倒しで達成

しかし、「2020年までに4ギガワット以上の再エネ導入」を発表したわずか1年後、この目標はあっさりと達成されました*。また、同社製品の生産を100%再エネで賄うことをコミットしたサプライヤー数も年々増加しています。

*参照:Apple、新たなサプライヤーの協力を得て、クリーンエネルギーの目標を達成 – Apple (日本)

Appleでは、世界中のパートナーに対して協力をお願いするだけでなく、どうやったら再エネ運用に移行できるか相談に乗ったり、技術の共同開発や資金援助も行っています。

Appleの次なる目標は、生産・販売する製品のバリューチェーン全体で、2030年までに「カーボンニュートラル」を達成することです*。カーボンニュートラルとは、製品を生産した時に排出される二酸化炭素と、吸収される二酸化炭素を同量にし均等にさせることです。

*参照:Apple、2030年までにサプライチェーンの 100%カーボンニュートラル達成を約束 – Apple (日本)

出典:Apple_Environmental_Progress_Report_2020.pdf – Apple

上記バリューチェーンには、Appleの製品・部品やその原材料、事業活動、さらには、ユーザーがApple製品を使用する時の電力まで全てが含まれています。2020年7月の発表では、世界17カ国の71社のサプライヤーが、Apple向けの製品・部品・原材料を再エネ100%で生産することを約束しました。

日本のサプライヤーで社名を公表しているのは、イビデン、太陽インキ製造、ソニーセミコンダクタ、セイコーアドバンス、日東電工、恵和、デクセリアルズの計8社になります。Appleバリューチェーン全体の二酸化炭素排出量のうち、最大の数値を占めるのは、「サプライヤーによる製品の生産工程」で発生しているもので、76%にも上ります。

出典:Apple_Environmental_Progress_Report_2020.pdf – Apple

2030年までに「カーボンニュートラルを達成」するためには、この排出量をゼロに近づけなくてはなりません。日本では前述した8社以外にも、Apple向けに製品や部品、原材料を供給している企業は数多くあります。Apple社との取引を継続するだけでも各社、再エネへの調達やそれを軸とした生産体制の構築を行っていく必要があるでしょう。

さらに、今後Apple社との取引条件に100%再エネで生産することが求められることも想像されます。

Appleに賛同する日本サプライヤーの取り組み

ここからは、Apple社のSupplier Clean Energy Prograに賛同している日本企業の取り組みについて紹介します。

イビデン株式会社

日本で最初にApple社のプログラムに賛同したのが、イビデン株式会社です。岐阜県大垣市に本社を構え、ICパッケージ、プリント基板などの電子関連製品を扱っています*。Apple製品向けには、集積回路や電子部品チップを提供しています。同社の事業所内にある水上太陽光発電システムを活用して、Apple製品の製造に使う電力を100%再エネで賄っています。

*参照:イビデン株式会社

前身となる企業が100年以上水力発電に取り組んできた歴史があり、開発から設計、土木から電気まで、様々な種類の工事の施工から運用、保守まで自社グループで手掛けられる強みがあり、再エネの導入には豊富な経験が活かされています*。

*参照:アップル、サプライヤークリーンエネルギープログラムを部品メーカー「イビデン」に導入 – 日本経済新聞

太陽インキ製造株式会社

太陽インキ製造株式会社は、太陽ホールディングスの主要子会社で、プリント基板用の絶縁材「ソルダーレジスト」を製造する大手企業です*。前述したイビデンのようなプリント基板メーカーに製品を提供し、電子機器に組み込まれる形で、Apple社と取引があります。同社では、Appleのプログラム開始前から再エネに取り組んでおり、目指す方向が一致していました。

*参照:太陽インキ製造株式会社 – 太陽ホールディングス

現在、グループ企業である太陽グリーンエナジー所有の水上太陽光発電所(埼玉県嵐山町)の電力を使用してアップル向け製品を製造しています*。

*参照:太陽インキ、アップル向け生産を「100%再エネ」に – 日経クロステック(xTECH)

同社では、再エネを活用していることが、Apple社との継続的な取引はもちろん、投資家に対してのアピールポイントになっています。昨今のESG投資の流れの中で、同社の再エネ活用の姿勢は大きな評価となり、さらなる投資を呼び込むことが予想されます。

株式会社セイコーアドバンス

埼玉県蓮田市のスクリーンインキ製造会社、株式会社セイコーアドバンスは、iPhone 11 Proシリーズのカラーリングを担当しています。同社は、Supplier Clean Energy Programを促進するApple社のファンドから資金を獲得し、再生可能エネルギーの導入をすすめました*。

*参照:ティム・クックCEOが思わずうなる、アップルブラックを生み出したこだわり (1/5) – ITmedia PC USER

再生可能エネルギーの導入により実質コストは少し増加したようですが、コスト増に見合う価値があると判断した点に大きな意義があるでしょう。今後は、単なる低コスト以上に、再エネの使用がそれを上回る価値があると考える、同様の決断をする企業は増えていくのではないあでしょうか。

サプライチェーンに押し寄せる再エネの波

今後はAppleのように、多くの企業が調達先の選定基準に再エネを挙げることも考えられます。そして株式会社セイコーアドバンス社のように、単なる原価低減策を打つよりも再エネを導入する方が大きな価値を持つ、そのような時代が始まろうとしていると思います。

CSRやESGから取り組まれてきた再エネが、今や中小企業を含む多くの企業にとって、取引先の拡大・深化、ひいては企業の持続可能性に直結する、そのような節目を迎えようとしているのではないでしょうか。

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