日本の企業はどんな環境対策をしているか?!SBT取り組み事例~日本企業編

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2020年9月時点で、SBTに加盟している企業は国内で102社あります。認定取得を得ているのは、そのうち75社です。今回は、多くの日本企業の事例を紹介することによって、多くの企業が温室効果ガス排出削減対策として、また取引先の動向をチェックするときの参考として活用してもらいたいと考えています。

SBT事例1:日本電産

会社名:日本電産株式会社

日本電産は1973年設立、家電、PC、自動車などのモーターやコンプレッサーなど精密機器を製造する企業です。中国、タイなどアジア圏を中心に、世界にグループ会社300社を構える大手で、年間の売上高は1兆円を突破しています*。

*参照:日本電産について – 日本電産株式会社

SBTターゲット

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出典:SMART2030 – 日本電産 

環境・気候変動への社会要請が強まる中、日本電産は1998年に環境マネジメント部門を立ち上げ、環境重視の経営へと乗り出していきました。2018年には具体的なCO₂削減目標を設定し、SBTへの加盟・認定を受けています。日本電産のSBTターゲットは2017年度を基準年として2030年度に30%を削減することです。

競争力を高め、持続可能な事業計画を図るためには、環境・気候変動への認識が不可欠であり、SBTに加盟することで持続可能な経営を目指していることが表明できるとしています。

SBTへの取り組み

日本電産では、脱炭素社会への取り組みとして「SMART2030」を掲げ、「自社事業のエネルギー効率の向上」と「再生可能エネルギーの積極導入」を実施しています。同時に健康・労働、環境などをテーマにSDGs対策にも注力しています。

「自社事業のエネルギー効率の向上」では、LEDの導入、空調設備の省エネ化、AI活用による生産プロセスの省エネ化を促進しています。

「再生可能エネルギーの積極導入」では、太陽光以外の再エネの検討・活用、太陽光パネルの導入を図り、実際に100%再生エネで電力を賄っている研究所もあります。

参照:SMART2030 – 日本電産

SBT事例2:コニカミノルタ

会社名:コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社は1936年設立(もともとの創業は1873年)、情報機器や産業用光学システム、医療用画像システムなどで150か国でグローバルに展開する大手企業です。とくに欧州、米国でのシェア率が国内よりも高いことが特徴です。

SBTターゲット

出典:CSRレポート2019 – コニカミノルタ

コニカミノルタでは、2003年から地球温暖化防止を考慮した製品づくりや環境マネジメント・ESGに積極的に取り組んでいます。

Dow Jones Sustainability World Indexに8年連続で採用、ESGに関連する指標や格付けなどで国際的に高い評価を受けている企業です。

2009年に「エコビジョン2050」を策定、2050年度までに2005年度比で80%のCO₂削減の目標を定めています。SBTへの加盟・認定は2017年、「エコビジョン2050」の新目標として2030年度までに60%削減を設定しています*¹。

参照:「SBTイニシアチブ」の承認を取得 – コニカミノルタ ニュースリリース

SBTへの取り組み

CO₂削減の具体的な取り組みとして、「自社での取り組み」「調達先との取り組み」「顧客との取り組み」と3つのテーマに分けて実施されています。

「自社での取り組み」として、取引先も含めサプライチェーン全体において生産工程を見直し、環境負荷低減とコストダウンを同時に実現するグリーンファクトリー活動を強化しています。中国の生産拠点2拠点、欧州の販社43拠点ではすでに100%再エネを実現しています。

工場のエネルギー診断をデジタル化、省エネ性能の高い印刷ソリューション、場所にとらわれない働き方改革を促進するIotソリューションなどで、調達先や顧客とともに広い範囲に渡ってCO₂削減の目標を目指しています。

参照:「カーボンマイナス」実現を – コニカミノルタ ニュースリリース

SBT事例3:清水建設

会社名:清水建設株式会社

清水建設の創業は1804年、越中富山の大工清水喜助が江戸・神田で開業したことが始まりです。清水建設は建設・土木事業にて現代の日本のインフラ設備の基盤を築き上げました。国内外で活躍する大手ゼネコンを代表する建設会社の1つです*。

*参照:企業概要|企業情報|清水建設 – 清水建設

SBTターゲット

出典:エコロジー・ミッション2030・2050 – 清水建設

清水建設は「地球社会への貢献」をモットーに、1991年に「清水地球環境憲章」を定めて環境保全に取り組んでいます。2018年度に「SDGs・ESG推進委員会」に名称を改変して、温暖化防止・省資源・生物多用性に積極的に貢献しています。

2005年度には、CO₂削減目標を定める「エコロジーミッション」を設定。さらに、2019年には「エコロジーミッション2030、2050」にてSBTの認定を受けています。

清水建設のCO₂削減のターゲットは、1990年度を基準年として2020年度には30%削減、2030年度には60%削減、2050年度には80%削減を目指しています。*¹

参照:気候変動対策 – 清水建設

SBTへの取り組み

清水建設ではCO₂削減を具体化していくために、「3E+S」に基づいた新エネルギー(再生可能エネルギー)の導入が非常に重要なポイントだと考えています。3E+Sすべてを満たすには、新エネルギーの導入を進めるとともに原子力やLNG・石炭などを併用したエネルギーミックスを実現していく必要があるとしています。

今後の多様な新エネルギーの需要に向けて、清水建設はロボットやAIを駆使した土木技術の開発を進めています。水素エネルギーによる電力システム、世界最大の浮体式洋上風力発電など画期的なプロジェクトに着手しています。

参照:新エネルギーへの取り組み – 清水建設

SBT事例4:Panasonic

会社名:Panasonic株式会社

Panasonicは松下電器器具製作所として1917年に創業、会社設立は1935年。海外20か国45拠点、グループ会社の総数は529社、売上高は7兆円~8兆円を記録している巨大な電機大手です。日本だけでなく、海外でも高いブランド性を誇り、とくに電池、TV、省エネ機能の各種家電・住宅設備などで有名です*。

*参照:会社概要 – 企業情報 – Panasonic

SBTターゲット

Panasonicでは2001年から、CO₂削減など環境問題に取り組む「グリーンプラン」を策定し続けてきました。2017年にはグリーンプランの一環として「パナソニック環境ビジョン2050」を設定、SBTの認定を受けました。SBTターゲットは、2030年までに30%削減、2050年にはゼロを目指しています。

SBTへの取り組み

Panasonicでは、使う電気よりも、再生エネルギーで創った電気の量が増えることでCO₂削減が実現できるとの見解です。創・蓄・省・エネルギーマネジメントのキーワードを基盤に多種多様な商品開発、技術開発を行っています。

滋賀県草津市の拠点構内では水素を燃料電池フォークリフトに採用、東京オリンピックの選手村では照明や空調に再生エネルギーの電力供給、中南米ではコスタリカ政府との連携にて100%再エネに取り組むなど、大規模なプロジェクトを着々と進めています。

参照:パナソニック環境ビジョン2050 – Panasonic

SBT事例5:その他の企業

他にも、国内では多種多様な業種にてSBTの認定を受け、意欲的なCO₂削減に取り組んでいます。最後に業種や事業規模が異なる企業をいくつかご紹介しておきましょう。

サントリーHD

お酒や飲食料品を製造・販売するサントリーHDでは「環境ビジョン2050」を策定しSBTの認定を受け、CO₂削減に取り組んでいます。SBTターゲットは2050年までに排出ゼロ、2030年までに自社拠点での排出を25%削減することが目標です*¹。

工場では太陽光発電など自家発電で生じた熱を回収するコジェネレーションや、別の工場に送電する電力託送などを開始しています。CO₂排出が少ない都市ガスやLNG、バイオマスへの燃料転換などサントリーHDでは多角的なアプローチが特徴です*²。

参照*¹:環境ビジョン – SUNTORY
参照*²:サステナビリティに関する7つのテーマ 02/CO²:SUNTORY

リマテック ホールディングス

リマテックホールディングスは、1970年代の高度経済成長期にともなう幾多の環境問題を解決すべく、廃棄物などの資源リサイクルを主軸とする企業です。SBT認定企業のほとんどが東証1部上場である中、非上場で比較的事業規模も小さくなるのが特徴です。

リマテックホールディングスは2030年に20%のCO₂削減、2050年に49%の削減を目標にSBT認定を受けています。石炭代替品となるRF(燃料)の開発と普及促進、太陽光・バイオガス発電事業などによって目標達成を目指しています。

参照:リマテックグループ CSR REPORT 2018:REMATEC

アズビル株式会社

アズビル株式会社はオートメーション技術を提供する会社で、各種計測・制御機器、防災・防犯装置、ビルや建物のオートメンション機器等を製造・販売しています*1。

「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」にて、2030年度には30%削減、2050年度には「排出量実質ゼロ」を目指しています。2019年にSBT認定済みで、自社における省エネ施策の強化や太陽光発電の導入だけでなく、建物や設備内におけるオートメーション化による省エネ・CO₂削減を幅広い業種への普及促進に努めています*2。

*1参照:会社概要|アズビル株式会社
*2参照:2050年に温室効果ガス「排出量実質ゼロ」へ – アズビル株式会社

それぞれの事業計画に合ったSBT

2019年までは、日本を代表するような大手企業が率先してSDGsやSBTに取り組んできましたが、最近では中小企業の間でも関心が高まり、行政側でも省エネ・CO₂削減対策に向けての税制控除や支援補助金など導入しやすい体制が整ってきています。

環境省でも、「中小企業向けSBT・再エネ100%目標設定支援事業」に参加する大企業を募集するなど、今後の支援対策も期待されます。各自治体の取り組みなども、まめにチェックするようにしましょう。

このCO2削減の取り組みや再生可能エネルギーへの転換の動きは、大手企業だけでなくそのサプライチェーン に位置する中小企業にも波及しようとしています。今後、その影響は顕著に出ていくでしょう。この影響をプラスに捉える1番の方法は再生可能エネルギーの早期導入になります。現在様々な導入方法がある中、投資負担などに惑わされず賢くこの状況を活用できた企業は企業価値を向上させることができるでしょう。

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