地球温暖化対策に向けて、世界各国で具体的なCO₂削減の目標が掲げられる中、日本では2030年度には2013年度比で26.0%の削減を目標としています。そして脱炭素で最も効果的なのが、温室効果ガス排出量の4割を占める電力源の変更です。
東日本大震災以来、火力発電の割合が大幅に高まった日本において、太陽光発電などの導入は脱炭素化をすすめる上で大きなインパクトがあります。一方で太陽光発電の導入には初期費用が大きくかかり、躊躇されている企業も多いのではないでしょうか。
そこで検討したいのが、PPA・TPO(第三者保有モデル)の活用です。PPA・TPOは導入が容易で、かつコストがかからない方法として近年とても注目されています。
PPAやTPOという言葉を見聞きすることはあっても、実際にどのような方法なのか、疑問に思う方も多いでしょう。今回はPPA・TPOについて、わかりやすく解説していきます。ぜひ、再エネ導入の参考にして下さい。
目次
PPA・TPO(第三者保有モデル)とは
PPA・TPOは「第三者保有モデル」とも呼ばれている太陽光発電を導入する方法の1つです。PPAとTPOという言葉は、厳密には意味が異なるのですが、日本ではほとんど同じ意味で使われています。
まずはPPA、TPOそれぞれの定義をご紹介していきます。
PPAとは
PPAとは、「Power Puchase Agreement/電力購入契約」を略したものです。日本では電気事業法の関係で電力は小売電気事業者(いわゆる電力会社)からしか購入できませんが、アメリカなどではそういった規制が存在しない州もあるため、発電事業者と電気を使用する需要家(企業など)が直接電力契約を結ぶことができます。このとき締結される契約がPPAと呼ばれます。
一方で、日本では後述のTPO(第三者保有モデル)のことをPPAと呼ばれることが多いです。
TPOとは
TPOとは、「Third Party Ownership/第三者所有権」を略したものです。
TPOはもともと欧米や欧州にて普及しているビジネスモデルのことで、太陽光発電だけでなく、フットボールチームのプレイヤーや企業のソフトウェアなどの所有権を第三者が所有することを意味しています。
2007年に米国にて住宅用太陽光発電のTPOモデルが急速に普及したため、国内では太陽光発電・再エネ設備の導入においてTPOモデルと呼んでいます*。
*参照:米国住宅用太陽光発電市場で広がるTPOモデル – みずほ銀行 産業調査部
太陽光発電や蓄電池などの発電事業者が、投資家や企業から資金を募り、法人や個人の建物に再エネ設備を設置します。発電事業者は、太陽光発電設備が設置された建物のオーナ(法人・個人)と電力購入契約を交わし、電力を供給します。
建物のオーナー(法人・個人)は、実際には再エネ設備を保有するわけではないのですが、太陽光発電設備が発電した電力を利用することができます。原則として初期費用ゼロ円・低コストにて再生可能エネルギーの導入が実現します。
参照:第三者モデル TPO/PPAモデルとは – メガソーラービジネス
PPA・TPOの第三者とは、
- 電力会社(大手電力会社・新電力会社)
- 太陽光発電などの設備事業者
- 一般の法人や個人
などです。
日本で多いケースは、再エネ電力を購入したい電力会社(第三者)が設備事業者に資金を提供しているケースや電力会社と設備事業者が共同でサービスを提供しているケースです。
また、最近ではコーポレートPPAといって電力事業とは関係ない一般の企業が電力会社や設備事業者と提携するケースも増えてきています
参照:再エネビジネスの「コーポレートPPA」- 日経XTECH
それぞれのメリット
PPA・TPOでは、太陽光発電(再エネ設備)を導入する企業、第三者となる電力会社や設備事業者それぞれにメリットがあります。
- 設備を設置する企業 → 初期費用ゼロ円・低コストで再エネ導入が実現
- 電力会社 → 設置した設備から再エネ電力が入手できる
- 設備事業者 → 設備の販売・普及が促進する
というように、それぞれにメリットが生じる仕組みなっています。
導入する側の立場からいけば、決して容易とはいえない再エネ設備の導入がいとも簡単にコスト不要で実現できる点が注目されているのです。再エネ賦課金の負担もなくなり、設備の保守・運営・メンテナンスはすべて事業者に任せられることもメリットです。
PPA・TPO(第三者保有モデル)で再エネ導入
ここからはPPAとTPOを厳格に区別せず、初期費用0円で第三者が屋根に太陽光発電設備を設置し、需要家はそこで発電された電力を購入する仕組みのことを、PPA・TPOと表現します。
実際にPPA・TPOで再エネを導入するを見ていきましょう。
導入方法
PPA・TPOの導入は、PPA・TPOを提供している電力会社や発電事業者などを探すことから始まります。導入の手順は以下のようになります。
- インターネットや情報誌などでPPA・TPOを提供している業者を探す(PPA・TPOを行う事業者からの提案で検討を開始する場合もあります)
- 気になる業者をいくつかピックアップしておく
- 契約内容などを問い合わせて業者を比較検討する
- 自社の条件に合う業者を選択する
- PPA・TPOの契約を結ぶ
- 再エネ設備の施工工事を行う
- 工事完了後に再エネ電力の利用開始
導入時の注意点
PPA・TPO導入にあたって、いくつか注意するポイントを抑えておきましょう。
- 建物や会社の状況などによってはPPA・TPOを導入できない場合がある
- 契約期間が定められている
- 契約期間満了後の設備の取り扱いは契約内容によって異なる
- 契約期間や電力使用料金は各事業者やプランによって異なる
- 再エネ設備の所有権はPPA・TPO事業者にある
- 売電収入を得ることはできない
- PPA・TPO事業者による審査がある
など、あらかじめ契約前に不明な点は確認するようにして下さい。
PPA・TPO 業者一覧
それでは最後に、参考までにPPA・TPOを提供している事業者をいくつかご紹介しておきたいと思います。ここでは、比較的に規模が大きい電力会社や住宅設備会社系列の事業者を一部ご紹介しています。ローカルの事業者もありますので自治体や地域情報誌など調べてみるといいでしょう。
- SB エナジー
- 京セラ関電エナジー合同会社
- みんな電気
- NTTスマイルエナジー
- グリムスソーラー
- Wゼロでんき
- HOME太陽光でんき
- TEPOCOホームテック株式会社
- ファブスコ株式会社
- ながの電力
- 株式会社エコスタイル
ちなみに、簡単に再エネ導入を実施する方法として、電力会社の再エネメニューを利用する方法もあります。詳しくは以下の記事をご覧下さい。
低コストで再エネ導入が容易に
2020年に入ってからとくに、REアクション、RE100、SDGsと国の政策にともない、企業や自治体におけるCO₂削減・再生可能エネルギー導入が急がれています。
気候・天候の異変を感じているのは水害・暖冬が続く日本だけではありません。地球温暖化を解決することは、今や世界中の国々とって最優先すべき深刻な課題となりつつあります。すでに対策済みの大手企業の間では、今後の課題としてサプライチェーンを取り巻くCO₂削減・再エネ導入が意識されています。
もはや、サプライチェーンの関係からも再エネ導入へと一歩踏み出すことは先送りできない状況にきているといえます。しかしながら、地理的環境や財政・経営状況など、様々な理由から具体的な再エネ導入を実現するのは容易なことではありません。
そこで、今回ご紹介したPPA・TTPなら低コストで再エネ導入が可能となるため、導入へのハードルが数段低くなります。いずれは何らかの手段を講じる必要があると思われる昨今、ぜひこの機会に1つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。