企業や自治体の間で脱炭素、再生可能エネルギーへの関心が高まっています。ここにきて太陽光発電の導入を検討する企業も多いのではないでしょうか。ひとことで太陽光発電といっても、設備の規模や電力の活用方法、売電するかなどによってタイプ分けすることができます。
中でも最も注目されているのが自家消費型太陽光発電です。自家消費型太陽光発電は、その名の通り太陽光発電で電気を作り出し、自分で消費することです。余った電気を売電することも可能です。
今回は、自家消費型太陽光発電の仕組み、導入のメリットをわかりやすく解説していきます。
目次
太陽光発電のタイプ
太陽光発電は創った電気の活用方法や売電方法などによって、複数のタイプに分けることができます。それぞれどのような方法なのか見ていきましょう。
自家消費型太陽光発電
自家消費型とは、屋根上などで太陽光発電した電力を自社で使用するタイプです。
自家消費型太陽光発電のイメージ
設置する太陽光発電の規模によっては、ある時点での消費電力の100%を太陽光発電で賄うこともできます。太陽光発電で足りない電気は電力会社から購入したり、余った電気は売電したりすることができます。
自社の建物、工場、倉庫、駐車場などに設置し、太陽光発電設備から直接自社に配電できます。
蓄電池とセットで導入する企業も増えており、日中に創った電気を蓄電池に貯めておけば夜間や天候が悪い時の電力も賄うことができます。災害・停電などの緊急時にも対応可能となり、BCP対策でも注目されています。
余剰買取型太陽光発電
余剰買取太陽光発電とは、売電もしたい、自社でも消費したい方向けのタイプで、消費電力の一部(30%以上)を太陽光発電で補い、余った電気を売電する方法です。
ただし、近年はFIT固定買取価格の低下から「売るよりも使った方が経済効果が高い」と自家消費型へと切り替える動きが見られています。消費電力が少ない場合にも費用対効果を高めることができます。
全量買取型太陽光発電
全量買取型太陽光発電とは、太陽光で創った電気をすべて売電に回す方法です。50kW以上の設備であることが条件となります。
投資用太陽光発電など、売電を目的に自社所有の敷地、あるいは土地や建物を購入して設備を設置します。投資効果を高めるために規模が大きくなるケースが多いです。自社では既に導入済みだったり、自社が太陽光発電に適していなかった場合にも採用されています。
住宅用と産業用
住宅用太陽光発電とは10kW未満の一般家庭用の太陽光発電のことです。産業用とは10kW以上の業務用太陽光発電のことで、50kW未満を低圧、50kW以上を高圧といいます。
住宅用と産業用では、FIT制度の買取価格や適用年数、売電収入の所得区分などが異なります。
自社敷地と遠隔地
太陽光発電は自社敷地内に設置する方法と、敷地外に設置して託送する方法があります。
自社敷地に設置する場合は、パワーコンディショナーから直接建物内の電気系統に配電が可能です。託送する場合は電力会社と託送契約を結びます。
自己投資とPPA・TPO
また、導入方法として自社で導入する以外にも、PPA・TPOを活用して導入する方法があります。
PPA・TPOとは「第三者保有モデル」とも呼ばれている方法で、電力小売り事業者が太陽光発電設備を企業の敷地・建物に設置して、その電力を企業が使える仕組みです。PPA・TPO契約を電力小売事業者などと結びで、設備を導入します。
太陽光発電設備の保有権はありませんが、再エネ導入が初期費用ゼロ円・低コストで実現可能です。
PPA・TPOを活用した太陽光発電の導入方法はこちらから詳しくご覧になれます。
自家消費型太陽光発電のメリット
様々な太陽光発電の活用方法がある中、費用対効果が最も高いといわれているのが自家消費型太陽光発電です。自家消費型太陽光発電の導入のメリットを7つご紹介します。
メリット1.電力コストでの削減で利益率が向上
自家消費型太陽光発電の最大のメリットは、自社の電力コスト削減で利益率が向上することです。
これまでは、余剰売電型や全量売電型で売電収入を目的にした太陽光発電が主流でしたが、FIT固定価格買取の低下から、高い売電収入が期待できなくなりました。現在は、売電価格よりも電力会社の電力単価の方が高い傾向にあります。
自社に設置した太陽光発電で創った電気の電力単価はゼロ円で、加えて太陽光発電設備の費用は年々安くなっています。電気を売るよりも、購入する電力を削減して自社で創った電気を使うことで、大幅な電力コストの削減が実現できます。
東京の電力単価
2018年から2020年の電力単価は、東京の場合は以下のような価格帯で推移しています。
- (低圧)電力 → 約22円~29円
- (従量)電灯 → 約22円~24円
- 高圧 → 約15円~17円
- 特別高圧 → 約10円~13円
FIT買取価格の推移
FIT買取価格は、住宅用・事業用が2012年当初は40円~42円/kWだったものが年々低下しています。2019年以降はFIT価格が電力会社の電力単価を下回るケースが多くなります。
令和3年の固定買取価格
令和3年度の固定買取価格は
- 10kW未満 → 19円(10年間)
- 10kW~250kW未満 → 11円~12円(20年間)
- 250kW~ → 入札制(20年間)
という設定になっています。
一方では、以前は高額だった太陽光発電設備の費用は低下しています。
太陽光発電システム費用平均値の推移
1kWあたりの太陽光発電システムの価格は、かつて40万円以上だったものが現在は約半額の20万円前後です。さらに太陽光パネルの変換効率はかなり向上しています。費用を抑えながらもそれなりの発電量が期待できます。
導入費用はかかりますが、購入する電気量が少なくなるので、比較的に短い年数にて導入コストを回収できます(5年~10年が平均的)。導入コストの回収後は毎月の電気料金はゼロ円です。
太陽光発電設備は一般的に25年~30年稼働します。10年で導入コストが回収できれば、残りの15年~20年は電力コストがほとんどかからず利益率を高めることができます。ただし、設備の維持費はかかります。
余った電気は売電できる
自家消費率100%でも電気が余る場合や、自家消費率が30%以上ある場合はFIT制度にて売電することも可能です。FIT買取価格は低下してはいるものの、売電収入にて一定の利益を得る方法も選択できます。
メリット2.再エネ賦課金や託送料もかからない
電力会社の電力を使用する場合、実際に使用した分の電気料金以外にも「再生可能エネルギー発電促進賦課金」が課されています。
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」とは、FIT固定買取価格制度によって電力の買取に要した費用を、電気を使用した際に、電気の使用量に応じて課金される金額のことです。
年度ごとに「再エネ賦課金」の単価は異なります。2021年度は2.98円/kWです。
使用電力量 × 2.98円 = 再エネ賦課金
参照:再生可能エネルギー発電促進賦課金 – 関西電力
この賦課金は電力会社との契約によって生じるもので、自社で再エネ設備を導入し、自社で消費する分にはかかりません。
また、遠隔地に太陽光発電を設置して、創った電力を託送する方法もありますが、この場合「再エネ賦課金」はかかりませんが、電力会社との託送契約にて「託送料金」が別途でかかってしまいます。
「再エネ賦課金」や「託送料金」が別途でかからないことも自家消費型太陽光発電のメリットだといえます。
メリット3.脱炭素・CO₂削減に高く貢献
自家消費型太陽光発電はコスト的なメリットだけでなく、そもそもの再エネ導入の目的となる脱炭素・CO₂削減に高く貢献できることが大きなメリットです。
太陽光発電はゼロエミッション(CO₂排出ゼロ)で温室効果ガス(GHG)と呼ばれる有害なガスを一切排出しません。
単純に太陽の光をモジュールに集めて、使用可能な交流電力へと変換するため、環境保全性が高い自然エネルギーです。太陽が地上に上っている限り、日常的な自然環境の中で延々と電力を創出することが可能です。
自家用太陽光発電を導入することで、自社自らがパリ協定・国の再エネ推進の一役を担うことができます。
2015年のパリ協定
深刻な地球温暖化が進む中、世界の気温上昇率を2.0℃~1.5℃以下に下げる取り決めが2015年パリ協定にて合意されました。参加国は日本を含めた175か国。
中期目標として、日本は2030年度までに対2013年度で26%のCO₂削減を実現するとしています。2050年にはゼロエミッション(CO₂排出ゼロ)を目指して、近年では多くの国で再生可能エネルギーを促進すべく様々な政策がとられています。
メリット4.RE100・RE Actionに適合する
もう1つの自家消費型太陽光発電のメリットはRE100やRE Actionに適合することです。
パリ協定にちなんだ脱炭素・CO₂削減対策への取り組みは、もはや国や大手企業の義務となっただけではなく、中小企業や一般個人においても社会的な義務となりつつあります。
近年では企業や自治体の価値・信用度は、いかに脱炭素・CO₂削減に取り組んでいるかが1つの目安となり、RE100やRE Action への参加を検討する企業が増えています。
RE100やRE Actionなどの取り組みに参加することで、積極的な再エネ導入をアピールすることができます。企業のブランド性や社会的信用度の向上、ビジネスの機会が広がり自社の成長拡大へとつながります。
メリット5.BCP対策になる
そして、自家消費型太陽光発電は蓄電池と組み合わせてBCP対策が行えることも大きなメリットです。送配電線網のどこかに被害があった場合でも敷地内に太陽国発電を設置していれば電気を使うことができます。
さらに蓄電池を活用し創った電気を貯めておけば、夜間や天候が悪い時にも電気を使用することができます。
メリット6.補助金や支援制度が活用できる
自家消費型太陽光発電の導入には国や自治体の補助金や支援制度が活用できます。
国の補助金・支援制度
- 省エネルギー診断事業費補助金
- 無料省エネ診断
- 無料節電診断
- 無料講師派遣
- 設備投資にかかる利子補給助成事業費補助金
など、時期によって補助金や支援制度は異なりますので資源エネルギー庁の公式ページにて確認してみて下さい。
自治体の補助金
- 東京都「再エネ増強プロジェクト事業」
- 神奈川県「自家消費型太陽光発電導入補助金」
- 大阪府池田市「太陽光発電システム設置費補助金」
など、各自治体ごとに補助金の内容が異なります。それぞれの自治体の公式ページをチェックしてみましょう。
メリット7.税制優遇が適用される
自家消費型太陽光発電の導入に税制優遇が適用されます。
- 省エネ再エネ高度化投資促進税制
- 再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置
- 営農型太陽光発電システムフル活用事業
など、国の政策によって支援する体制が整っています。自家消費型太陽光の導入で節税効果も期待できるのです。
太陽光発電の導入に活用できる補助金・税制優遇制度について以下の記事で詳しく解説しています。合わせて参考にして下さい。
太陽光発電の導入は業者選びが肝心
今回解説してきたように、自家消費型太陽光発電には数々のメリットがあることがわかりました。しかしながら、太陽光発電の導入にあたってはデメリットやリスクも存在します。
発電量を増やすにはそれなりに費用も高くなることや、メンテナンス費用がかかること。また、発電量は日照時間に左右されるため太陽光発電が適さないケースもあります。反射光や設備の景観から地域住民とのトラブルがあるなど考慮すべき点も少なくありません。
いざ導入する時には、デメリットやリスクを考慮した上で適切な方法でアドバイス・サポートしてくれる実績ある業者の存在が必須です。太陽光発電は25年~30年と長く利用していく設備であり、費用も決して安いとはいえません。
満足のいく再エネ導入を果たすためにも、太陽光発電の業者選びは慎重に時間をかけて、信頼できる業者を選ぶことが肝心なポイントとなるでしょう。