バイオマス発電は生物に由来する廃棄物資源を有効活用する技術です。生物資源(バイオマス)の燃焼やガス発酵などを利用するのが特徴で、廃棄物発電の一種として導入が進められています。しかし、環境問題に貢献できる技術でありながら、太陽光発電や水力発電などのクリーンな再生可能エネルギーの中で普及率が低い状況が続いています。
この記事ではバイオマス発電の導入の現状を説明した上で、バイオマス発電の普及がすすみにくい理由を解説します。バイオマス発電ならではの課題について理解しておきましょう。
目次
バイオマス発電に使用される生物資源
バイオマス発電では生物資源の廃棄物を幅広く使用するのが特徴です。生物資源は炭素を多く含んでいるため、燃焼によってエネルギーを取り出すことができるからです。家畜の排せつ物、下水汚泥、食品廃棄物、農業残渣、建築廃材、廃材や残材、古紙、黒液などの様々なバイオマスが発電に活用されています。
バイオマス由来の廃棄物資源は乾燥系・湿潤系・その他という水分含量で分類する方法と、木質系・農業系・製紙工場系・生活系というような資源の性質や発生源によって分類する方法があります。
このような分類はバイオマス発電において重要な意味があります。資源によって燃焼効率や発生源などに違いがあるため、バイオマス発電に要求される設備要件が異なります。全てのバイオマスを同じ施設で処理するのは困難なので、分類に応じて同じ種類の資源を集めて発電に使用しているのが現状です。
バイオマス発電の導入状況の実態
バイオマス発電はFIT制度(固定価格買取制度)の活用によって全国的に導入が進められています。バイオマス発電では発電コストが高いため、高い単価での買取が長期保証されるFIT制度は導入の推進力となりました。小規模な施設が多いものの、全国各地でバイオマス発電が行われるようになっています。
バイオマス発電の導入状況を経年的に見てみると、FIT制度の恩恵を受けて発電設備が着実に増えてきていることがわかります。特に注力されているのが木質バイオマス発電です。平成27年度以降、間伐材由来の木質バイオマスと一般木質バイオマス農作物残渣の利活用のための設備投資が積極的に進められてきました。
木質バイオマスの利用が浸透してきたのはペレット化が効率的に行えるようになったからです。木質バイオマスは燃焼による発電効率を上げるために木質ペレットに加工してからバイオマス発電に使用します。ペレットの製造施設が増加し、広い地域で木質バイオマスの加工ができるようになりました。そのお陰でバイオマス燃料を一部混ぜる発電所も増加し、木質バイオマスの活用が進んだのです。
バイオマス発電の導入は課題が多い
木質バイオマスのバイオマス発電の導入が急速に進んだことを考慮すると、今後は他の生物由来の廃棄物資源も利用が速やかに拡大するのではないかと思うかもしれません。しかし、実際にはバイオマス発電には課題が山積していて導入を進めるのが難しい状況があります。
木質バイオマス発電の導入が進んだ理由
木質バイオマスがスムーズに利活用できるようになったのには以下の3つの理由がありました。
・燃焼・発電・効率が高いペレット化の技術開発が進んでいたから
・各地においてペレットの製造工場が設置されたから
・ペレットを資源化できる既存設備が存在していたから
ペレット化の技術が存在していて、木質ペレットにすれば効率的な発電ができることが既に知られていました。FIT制度によって導入が進んだのは産業化の道のりが明確に見えていたからなのです。
間伐材由来の木質バイオマスがそれ以外に比べて先に設備導入が進んでいたのにも理由があります。間伐材が排出される地域は局在化していて、一か所からまとまった量の資源が出てきます。そのため、ペレット製造施設の規模を大きくしてコストを下げやすいというメリットがありました。
山積しているバイオマス発電の課題
バイオマス由来の廃棄物は一か所で大量に発生することはあまりありません。バイオマス発電を実現するには広い範囲で少量ずつ発生した資源を集める必要があります。収集には運搬コストがかかり、管理にもスペースやコストがかかります。特に湿潤系のバイオマスは重さや大きさの割にエネルギーになる部分が少なく、収集や管理のコストが肥大化しがちです。
資源の集積化と処理施設の大規模化はバイオマス発電の大きな課題です。現在では全国各地に小規模の施設が点在しています。集積化によって効率を上げ、採算が合うバイオマス発電を実現できなければ継続的な発電は困難です。持続可能な発電方法として確立するにはまだほど遠い状況があります。
ペレット化のような前処理技術が開発途上の生物資源もたくさんあります。簡単な前処理で効率的な発電ができなければ資源化は難しいため、効率の良い前処理技術の開発も大きな課題です。
この他にもバイオマスと発電方法の相性問題など、バイオマス発電の課題は山積しています。一つずつ解決を進めていくことがバイオマス発電の導入を進める上では欠かせないでしょう。
バイオマス発電で広範囲の資源を利活用するには
バイオマス発電は普及率が低いと言われていましたが、木質バイオマスのように導入が進んできた種類もあります。ただ、広範囲の資源を効率的に利用できる基盤が整っていないため、まだあらゆるバイオマスを発電に有効利用できるわけではないのが現状です。
廃棄物の収集と集積化のインフラを整えて規模の拡大を図るのは重要な解決策です。また、効率の高い発電技術やペレット化のような前処理技術の開発は解決につながります。生物化学的ガス化方式の登場によって家畜排せつ物や下水汚泥の小規模処理もできるようになってきました。
資源活用のためのインフラ整備と効率的な発電のための技術開発がバイオマス発電の導入を促す重要な要素です。新しい技術の開発には学術界が大きな貢献をしています。産官学が協力してバイオマス発電の可能性を模索していくことが利活用の推進につながるでしょう。