アスクルの再生可能エネルギー導入の動きに見る、サプライチェーンと再生可能エネルギー

サプライチェーンREアクション
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近年大手企業を中心に、再生可能エネルギーを導入する流れが加速しています。特徴的なのは、自社のみならずサプライチェーン全体で再生可能エネルギーの導入をしようとしている点です。

そこで今回は、最近ニュースになったアスクルの事例からサプライチェーンでの再生可能エネルギー導入の動きを解説します。

再生可能エネルギーをめぐるアスクルの動きとは

まず初めに、事務用品の通信販売を行うアスクルが再生可能エネルギーをめぐって、どのような活動を行ってきたかを解説します。

2016年:2030年CO2ゼロチャレンジを宣言

アスクルが再生可能エネルギーの導入を本格的に進めるきっかけとなったのは、2016年に自社で開催した「アスクル環境フォーラム2016」での宣言です* 。このフォーラムは、サプライチェーン(原材料の調達から商品の配送までの流れ)全体でのCO2削減に向けて、企業間連携の可能性を探る目的で開催されました。

参照:アスクル環境フォーラムとは – アスクル株式会社

このフォーラムにて、アスクルは「2030年CO2ゼロチャレンジ」という宣言を出し、本格的に再エネ導入に向けて動く意思を表明しました。宣言の内容は、「2030 年までにアスクルが事業所から排出するCO2、および配送に関わるCO2をゼロとするチャレンジを行う」というものでした。

つまり、自社の事務所のみならず、原材料メーカーなどのサプライチェーンに携わる企業全体で、CO2の削減にチャレンジすると発表したわけです。

2017年:RE100に加盟

上述した宣言達成に向けた施策の一環として、2017年にアスクルは「RE100」への加盟を果たしました。RE100とは、事業運営に必要な電力について、100%再生可能エネルギーで調達することを目指す国際的な取り組み(イニシアチブ)です。RE100に加盟する企業は、加盟時に100%再生可能エネルギーを使って事業を運営することに向けて行動を起こしていくことを宣言する必要があります。

「再エネ達成までの時間」や「再エネ導入の範囲」、「再エネ導入の達成方法」などが審査され、無事承認されればRE100への加盟が認められます。アスクルはRE100への加盟を正式に果たしたことで、再生可能エネルギーを使った事業運営へと舵を切りました。

2018年:「グリーナでんき」を物流センター2拠点に導入

2016年にCO2ゼロ、2017年に再生可能エネルギーの本格的な使用を宣言したアスクルは、2018年以降に具体的な施策を講じることで、宣言の実現に動いています。

はじめに同社では、2018年の5月にグループ全体で25%の再生可能エネルギーへの切り替えを実施しました。続いて7月1日と8月8日には、横浜市鶴見区にある「ASKUL Logi PARK 横浜」と東京都江東区にある「新木場物流センター」という2ヶ所の物流センターに、「グリーナでんき」という再生可能エネルギーを導入しました。

一連の活動によりアスクルでは、グループ全体における電力使用量のうち34%を、再生可能エネルギーへと切り替えました。2020年以降も再エネ導入の活動を進めていき、100%再生可能エネルギーの実現にチャレンジすることを表明しています*。

*参照:アスクル、再生可能エネルギー導入を促進 グループ全体で電力使用量34%の切り替えを達成。 – PR Times

サプライチェーンへの再エネ導入を求める動きも加速

近年は、企業単体ではなくサプライチェーン全体に再エネ導入を求める動きが加速しています。この章では、サプライチェーンに再エネ導入を求める実際の事例を紹介します。

最も有名なのはアップルの「Supplier Clean Energy Program」

サプライチェーン全体での再エネ導入の先駆けとなったのは、アップルが2015年に発表した「Supplier Clean Energy Program」です。このプログラムでは、2020年までにサプライチェーン全体で用いる再生可能エネルギーを4ギガワットまで拡大するとの目標を立てていました*。

*参照:Supplier Clean Energy – Apple

合計44社のサプライヤーが協力した甲斐もあり、当初の目標の倍となる8ギガワットを達成しようとしています*。

*参照:Apple、サプライヤーの協力を得てクリーンエネルギーの目標を達成 – Apple

プロジェクトの順調な進捗を踏まえて、アップルでは「2030年までに実質CO2排出量ゼロを目指す」という新しい目標を発表しています*。

*参照:Apple、2030年までに製品・サプライチェーンも100%CO2フリーに スマートジャパン

アップルのプロジェクトが順調に進むことで、より一層世界中でサプライチェーン全体での再エネ導入の動きが加速していくと予想されます。

日本電産のSMART2030

昨年アップルの副社長が日本に来日し、取引先の日本企業に対して再生可能エネルギーの導入を要請しました。要請先の一社に含まれていた「日本電産」も、再エネ導入に積極的な企業の一つです。日本電産では、2019年より「SMART2030」というプロジェクトを開始し、2030年度の温室効果ガス排出量を2017年比で30%削減することを目標に掲げて、様々な施策を講じています*。

*参照:2. Smarter Operation ~自社を革新するSMART2030の発動~ – 日本電産株式会社

施策の一環として同社では「再生可能エネルギーの積極導入」を進めており、研究所の再エネ率100%を実現しました*。

*参照:EGM、日本電産の研究所へ「実質再エネ100%電力」の供給開始 – 環境ビジネスオンライン

リコーの環境経営

電気機器メーカーのリコーでは、地球環境への負荷削減と再生能力の向上に取り組む「環境経営」を実践しています。その一環として同社はRE100に加盟し、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。具体的には、2019年度より主力製品の組立て生産を行う全社屋で使う電力を、100%再生可能エネルギー由来の電力で賄う施策を行っています。

2019年3月時点での再エネ使用率は9.4%に留まっているものの、2050年までには100%の再エネ使用率を実現できる見通しです*。

*参照:環境経営 – リコー

富士フイルムの取り組み

富士フイルムでは、「2030年度までにCO2排出量30%削減(2013年度基準)」という目標を掲げて、様々な施策に取り組んでいます。その一環として、同社はアスクルやリコーと同様にRE100に加盟し、お取引先への説明会で省エネや再エネ設備導を働きかけるなど、サプライチェーン全体で再生エネルギーの導入を進めています。

そうした施策の甲斐もあり、2018年度には製品ライフサイクルでのCO2排出量を、前年比で8.3%削減することに成功しました*。

*参照:【重点課題1】気候変動への対応 – 富士フイルムホールデイングス

サプライチェーンへの再エネ導入が中小・零細企業にもたらす影響

製造業を中心に大半の中小・零細企業は、大手との取引(受託)により収益を得ています。

したがって、大手企業がサプライチェーン全体で再生エネルギーの導入を進める場合、その取引先である中小・零細企業でも再エネ導入が必須となってくるでしょう。

今後の販路開拓には再エネの導入が不可欠

アスクルや富士フイルム、リコーなど、日本経済を支える大手企業が次々と再生可能エネルギーの導入に踏み切っています。特筆すべきは、自社のみならずサプライチェーンに携わる企業に対しても再エネの導入を求めている点です。そのため、低コストでの取引と同じくらい、再エネを導入しているかが、中小企業にとっても大きな経営要素となっていくと考えられます。

さらに一般企業のみならず、官公庁においても再エネ導入の動きが進んでいます。現に自衛隊では、再エネ比率30%を目指した調達ルールを設け、再エネ導入施設が151にまで拡大しました*。今後、官公庁全体でこの動きが加速していくことが考えられ、国の調査も進められています。

*参考:自衛隊、再エネ30%の電力を115施設で導入 「政府で最も進んだ調達に」-環境ビジネスオンライン

企業規模の大小に関わらず、今後多くの企業が持続可能な会社であるためには、再エネの導入は必須要件になっていくことが考えられます。

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