バーチャルPPAとは?再エネ比率を高めるバーチャルPPAの仕組み

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PPA・TPOでは、自社で再エネ設備を導入しなくとも消費電力を再エネに切り替えることが可能となるため、活用する企業が増えているようです。

さらに、最近では再エネ比率を高めるために、企業にとって利便性が高く・費用対効果に優れた方法として「バーチャルPPA」と呼ばれる再エネ導入方法が注目を浴びています。

このバーチャルPPAとは一体どのような仕組みになっているのでしょうか。

今回は、まだ国内では普及にあたっての準備段階にあるといえるバーチャルPPAについて解説していきます。

バーチャルPPAとは

バーチャルPPAとは、PPAの仕組みをバーチャルで行える再エネ導入制度のことです。米国で主流になりつつある制度で、企業の物理的に困難な再エネ導入を容易にしたり、再エネ比率を高めるために活用されています。

そもそもPPAとは何なのかから見ていきましょう。

PPAとは

出典:株式会社H&Sエナジー – 「再生可能エネルギーの拡大とコーポレートPPA」

PPAとは、

「Power Puchase Agreement/電力購入契約」を略したもので、電気を使用したい企業が発電事業者と直接、長期で電力契約を結ぶことをいいます。

自社で再エネ設備を導入しなくとも、発電事業者にオンサイトまたはオフサイト*¹で発電してもらい、発電事業者と直接契約することで再エネを導入することが可能となる方法です。

日本では、個人や企業が電力小売り事業者を介さずに、発電事業者と直接契約することができないため、オンサイト型・第3者保有モデルのTPO*²が主流です。

参照*¹:株式会社H&Sエナジー – 「再生可能エネルギーの拡大とコーポレートPPA」
参照²:環境ビジネスオンライン – 第3者所有モデル(TPOモデル)・PPAとは

PPA・TPOについて詳しく知りたい方はこちらの記事もぜひ参考に!

バーチャルPPAの仕組み・構造

バーチャルPPAとは、

「Virtual Power Purchase Agreement/仮想電力購入契約」を略したもので、V-PPAとも呼ばれている再エネの購入方法です。

バーチャルPPAでは、企業・需要家は実際に再エネ電力を購入するわけではなく、「環境価値 = 再エネ電力証書」を発電事業者から購入します。

基本的には長期契約となり、あらかじめ合意した固定価格(ストライク価格/ストライクプライス)と市場価格との差額を、需要家と発電事業者との間で精算する仕組みとなっています。

参照:自然エネルギー財団「企業が結ぶ自然エネルギーの電力購入契約 コーポレートPPA実践ガイドブック」

バーチャルPPAのメリット

バーチャルPPAでは、発電事業者と企業・需要家それぞれにメリットがあります。

発電事業者へのメリット

発電事業者としては、固定価格が確保されているため、発電所の投資回収を予測することができ、融資や出資などを受けやすくなります。

  • 固定価格による安定収入を長期的に確保できる
  • 収益を前提とした資金調達が可能となる
  • 発電設備を新たに建設しやすくなる

参照:自然エネルギー財団「企業が結ぶ自然エネルギーの電力購入契約 コーポレートPPA実践ガイドブック」

企業・需要家へのメリット

これまで通り小売電気事業者から電力供給を受けながら、環境価値を発電事業者から長期的に購入することで、実質の再エネ比率を高めることができます。具体的には、

  • 物理的な制約を受けない再エネ導入(遠方の発電所からの環境価値購入)が可能となる
  • 再エネ比率アップが容易となる
  • 従来通りの安定した電力供給が確保できる
  • 自社で再エネ設備を購入する必要がない
  • 再エネ比率の向上から企業価値が高まる

など、企業側にとっての利点が多いことが注目されています。

参照:メガソーラービジネス – 「バーチャル導入に向けて制度改革を」
参照:日経XTECH – 「アップルを再エネ100%に導くバーチャルPPA」

このように、投資の予見性を高めたい発電事業者と、長期的に環境価値を手に入れたい企業・需要家の双方に​メリットがあり、新規発電所の建設を促すポテンシャルをも秘めています。​

さらに、気候危機の観点からは新たな自然エネルギー発電設備の建設が求められており、新規発電所の建設を後押しするバーチャルPPAへの期待が高まります。

バーチャルPPAの活用事例

例えば、米大手Appleは全世界の事業所で使用する電力に、自社の巨大な再エネネットワークと併せて、バーチャルPPAの活用にて再エネ比率100%を実現しています。さらに、サプライチェーンに向けてもバーチャルPPA*¹の活用を促進させています。

マクドナルドは1GWの再エネをバーチャルPPAで取得、他にもGoogleAmazonマイクロソフトなど脱炭素をリードする多くの大手企業にて同様の動きが見られています。

国内では、シナネン株式会社によってバーチャルPPAのビジネスモデルが2022年から開始される予定*²されています。ただ、普及にあたっては制度的な問題があり、2021年5月にJCLPによって「バーチャルPPA」導入に向けた制度改革への意見書が提出されている段階です。

参照*¹:自然エネルギー財団 – 「Apple 全世界で自然エネルギー100%達成」
参照*²:シナネンホールディングス – 「オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電供給モデル創出事業」

日本におけるバーチャルPPAの課題

国内においてバーチャルPPAの普及へのネックとなっているのが、「国に登録した小売電気事業者しか個人や企業に電力を販売できない制度」です。

電力の自由化によって、大手電力会社以外でも電力の販売が可能にはなっていますが、再エネ電力を保有する事業者と再エネを要する企業が個別で契約することができません。

そもそもバーチャルPPAの利点は、容易に再エネ発電事業者と環境価値のやり取りができることです。

現状では国内の場合、小売電気事業者を介さないとバーチャルPPAが利用できません。仕組みが複雑となりバーチャルPPAの利点が十分に活かせず、普及への足止めとなることが指摘されています。

できるだけ早期の電力小売り制度への規制緩和が、国内におけるPPA・バーチャルPPAだけにとどまらず、統括的な再エネ普及促進へのポイントとなるでしょう。

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