企業の再エネ導入は明日からでも簡単に!?電力会社の再エネメニューとは

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CO₂削減、地球温暖化対策への取り組みがいよいよ先延ばしにできない時期にきています。もはや大手企業のみならず、サプライチェーンの関係上、中小企業においても再エネ100%・ゼロエミッションに向け、具体的な対策をする必要があります。

再エネ導入が企業の信頼性や価値を評価する1つの目安となりつつある中、いざ再エネ導入に踏み出そうと思っても、そう簡単には実施できないと悩む企業も多いのではないでしょうか。

再エネ導入といえば、実際に自社で設備を導入することをイメージする方が多いと思いますが、実は電力会社の再エネメニューへと電力を切り替えるだけでも可能です。

今回は、より手軽に再エネ導入を実現する、電力会社の再エネメニューについて解説していきます。ぜひ、参考にして頂ければ幸いです。

企業の再エネへの取り組み、導入方法は?

自社での再エネ導入を検討した時にまずイメージするのは、自社で太陽光発電などの設備を導入することですが、設備の選択や敷地の環境、コスト面からも容易ではないと足踏みしてしまう企業が多いようです。

しかし、CO₂削減・ゼロエミッションに加担する方法は、ダイレクトに再エネ設備を自社敷地内に購入する以外にもいくつかあります。まずは、自社の事業計画・予算にて無理のない方法で始めていくことが大切です。

再エネを導入する方法はいくつもある!

再生可能エネルギーを導入する方法は

  • 自社工場の屋根に太陽光発電設備を自社所有で導入する
  • PPAを活用してコストをかけずに再エネ設備を自社工場の屋根に導入する
  • 遠隔地の自社所有・リースの再エネ設備から自己託送する(要送配電契約)
  • PPA事業を行う電力会社と再エネの電力購入契約を結ぶ
  • 電力会社・電力プランを再エネメニューに切り替える

など、設備を直接購入する以外にも様々な方法があります。

最も簡単に取り組める電力会社の再エネメニュー

いくつかある再エネ導入方法の中で、最も簡単な方法は電力会社の再エネメニューを利用する方法です。再エネメニューであれば、手間もかからずコスト不要で再エネ導入に取り組めます。

日本では2016年以降は電力の自由化によって、従来の大手電力会社以外で「電気小売事業に参入する企業」は689社(令和2年12月3日時点)と次々に増えています。

従来の大手電力会社とは、東京電力や中部電力など電気の自由化以前の電気小売り事業者のことです。一方で電気の自由化以降に電気小売り事業に参入した新しい事業者は新電力会社と呼ばれています。(丸紅新電力やみんな電力、出光グリーンパワー電力など)

ここでは、従来の電力会社も新電力会社もまとめて「電力会社」と表記しています。

数百を超える電力会社が多種多様な電力プランを提供する中、新しく提供され始めたのが再エネメニューと呼ばれる電力プランです。幅広い選択肢から各社の用途に合った再エネメニューを探すことが可能です。

また、PPA(TPO)モデルと呼ばれる再エネ導入方法も、最近になって中小企業の間で注目されている方法です。電気小売事業者が、第三者に設置した再エネ設備から供給される電力を送電する電力サービスのことで、自己負担不要で再エネ設備が設置できたり、PPAが供給する再エネ電力プランを利用することができます*。

電力会社のや再エネメニューやPPAモデルの再エネ電力プランを活用することで、間接的に最エネ導入が実現できるわけです。

*参照:第三者所有モデル(TPO)/ PPAとは – メガソーラービジネス

ちなみに、以下の記事ではSBT加盟企業におけるCO₂削減対策の参考事例をご紹介しています。SBTとは、積極的に地球温暖化対策・ゼロエミッションを実施している企業が加盟する国際機関のことです。ぜひ、合わせて参考にして下さい。

サプライチェーンに激震!GHG Scope3を念頭におくSBT加盟企業の環境対策
日本の企業はどんな環境対策をしているか?!SBT取り組み事例~日本企業編

電力会社の再エネメニューとは

電力会社の再エネメニューは、再エネ電力プラン・エコプランなどとも呼ばれている電力プランのことです。文字通り再生可能エネルギー(CO₂排出ゼロ)から構成された電力を意味しています*。

ほとんどの再エネメニューは各電力会社の公式サイトにて手続きできます。

電力会社や電力プランを再エネメニューに切り替えたとしても、送配電線は全く同じものを使用するため、ほぼ現状のままで基本的に工事の必要もありません。支払先・支払い金額だけが変わるイメージで、むしろ電気料金が安くなるケースも多いです。

追加コスト不要で、企業の大小を問わず簡単に再エネメニューに切り替えることが可能です。再エネメニューを利用することで、再エネ設備を購入せずとも再エネ導入が実現できます。

*参照:自然エネルギー100%の電力メニュー – 自然エネルギー財団

再エネ100%の電力

REアクションやRE100でも目標となっているように、再エネメニューは再エネ100%を実現するために提供されている電力プランです。再エネメニューのほとんどが100%再生可能エネルギーで構成された電力だと謳っています。

ここで、そもそも再生可能エネルギーとはどのような電力なのか簡単に見ておきましょう。

再生可能エネルギーとは

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 地熱発電
  • バイオマス発電

など自然環境から入手が可能でCO₂を排出しない燃料、かつ繰り返して使える(枯涸しない)燃料のことをいいます。

再生可能エネルギーについて詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にして下さい。

「再生可能エネルギーの定義と種類を全解説!」

再エネメニューの仕組み

再エネ100%を謳っている再エネメニューですが、実際のところ現段階では100%再生可能エネルギー由来の電力のみを供給している電力会社は皆無です。再エネメニューの電力のすべてに再生可能エネルギーが使われているわけではないのです。

再エネメニューの場合でも、下記の「電源構成のイメージ図」のように、原子力発電、火力発電、再生可能エネルギー発電など様々な電源を用いて電力を供給しているのが一般的です。CO₂の排出量が多い、石炭や石油などの電源も使われています。

電力会社の電源構成のイメージ

出典:小売り営業ガイドライン(電源構成表示の具体例)‐ 経済産業省

※1 FIT電気は再エネ指定の非化石証書の使用により、実質的に再生可能エネルギー電気としての価値を持ちます
※2 この電気には水力、火力、原子力、FIT電気、再生可能エネルギー等が含まれます

再生可能エネルギー以外の電力に関しては、他社からの再エネ電力の購入や非化石証書やグリーン電力証書の購入によって再エネ100%を実現しているのが現状です。

FIT電気とは、自社で所有する再エネ電源からつくった電力ではなく、固定価格買取制度(FIT制度)によって買い取られた再エネ電気のことをいいます。

再エネメニューのイメージ

出典:再エネメニューの電源と環境価値 – 自然エネルギー財団

上記のように、自社の再生可能エネルギーに加えて、非化石証書、Jクレジット、グリーン購入電力という3つの証書(環境価値)を購入することで、実質100%の再生可能エネルギーとして提供する仕組みになっています。

3つの証書

では、次に再エネとしての環境価値を与える3つの証書について解説していきます。

非化石証書

非化石証書とは、CO₂を排出しない非化石電力に「環境価値」を与え、「環境価値」を証書として売買できるようにしたものです。JEPXの非化石市場にて売買できる仕組みになっています*。

非化石電力とは再生可能エネルギー(FIT/非FIT)に加え、原子力発電などCO₂が生じない電源(非FIT/ゼロエミッション)すべてを含みます。化石電力とは石油や石炭などCO₂を多量に排出する化石燃料のことです*。

*参照:非化石証書を利用して、自社のCO₂削減に役立てる先進企業 – 資源エネルギー庁

J-クレジット

Jクレジットとは、再エネ機器の導入や森林経営などによる具体的なCO₂削減量にクレジットをつけて国が認証する制度のことです*。

Jクレジット制度は国が創出・運営している再エネポイントのようなもので、売買することが可能です。Jクレジット主催のオークションにて売買されています*。

*参照:J-クレジット制度について – J-クレジット制度

グリーン電力証書

グリーン電力証書とは、一般社団法人 日本品質保証機構(JQA)が発行する再エネ電力の証明書です。再生可能エネルギー設備を導入している企業・自治体が申請して認定を受ける仕組みになっています。

認定された企業は証明書を売却、再エネ・CO₂対策にその他企業が購入することができます。一般社団法人日本品質保証機構が認証しています*。

参照*:グリーン電力証書の概要 – 一般社団法人 日本品質保証機構

「実質再エネ」と「再エネ」

出典:非化石証書制度の変更を踏まえた小売り営業ガイドラインの改定 – 経済産業省

ひとことで再エネ100%の電力プランだといっても、非化石証書による再エネ率が高く、再エネ電源の比率が著しく少ない場合もあり得ます。

経済産業省は、今後は再エネメニューを提供する電力会社には、非化石電源の比率(ゼロエミッション)を高めることを求めると同時に、非化石証書の種類によって再エネ100%の訴求方法を改正していく方針です。

まず、完全に「再エネ」として訴求できるのは、FIT売電をしていない再エネ電源に加え、再エネ指定の非化石証明書にて構成されている電力です。

もともとの供給源が化石電源・FIT電源となる場合、再エネ指定の非化石証書があったとしても「実質再エネ」と見なされます。火力発電で得た電力を再エネ指定の非化石証明書で補っている場合などです。

また、いずれのタイプの電源を保有していたとしても、再エネ指定無の非化石証明書にて電力を補っている場合は再エネ電力として「訴求できない」としています。

  • FIT売電なしの再エネ電源 + 非化石証明書(再エネ指定)=再エネ電力
  • FIT売電ありの再エネや再エネ以外の電源 + 非化石証明書(再エネ指定)=実質再エネ電力
  • すべての電源 + 非化石証明書(指定無)=再エネ訴求不可

参照:非化石証書制度の変更を踏まえた小売り営業ガイドラインの改定 – 経済産業省

再エネメニュー・再エネ電力プラン

再エネメニューは各電力会社によって名称が異なり、様々なタイプの再エネメニューが提供されています。

各社の再エネメニューには以下のようなものがあります。

各電力会社の再生可能エネルギー比率

出典:小売電気事業者の再生可能エネルギー比率 – Sustainable Japan

2018年度の時点では、各電力会社の再生可能エネルギー比率は上記のようになります。再生可能エネルギー比率が高い電力会社ほど、具体的なCO₂削減への貢献度が高い電力だと見なすことができます。

各電力会社では、自社の電源構成を公式サイトで公開しているケースもあります。また、再エネ電源の比率が少ない場合でも、FIT電力の比率が高いケースもあります。今後の再エネへの取り組みが期待できる企業を支援する意味で選ぶのも1つの方法です。

各社の公式サイトの情報を確認しながら、電力プランを選択する際の参考にしてみて下さい。

企業の再エネ導入は手軽に始められる!

今回ご紹介したように、再エネ機器の導入にためらいがちな中小企業においても、手近な対策として電力会社の再エネメニューへと電力を切り替える方法があります。

ただし、すべての電力会社において高いCO₂削減効果が期待できるとは限りません。証書に依存しすぎる再エネ電力の場合、本来のCO₂削減と呼ぶにはほど遠く、架空の削減量だといっても過言ではありません。経済産業省の報告によると、再エネ率がかなり低い電力会社であっても、ともすると再エネ100%電力として販売できてしまう恐れがあると指摘しています。

電力会社の再エネメニューを選択する際には、各種証書による再エネ環境価値ではなく、実際の再エネ電源の比率や少なくともFIT電源の比率、さらに、今後の再エネ稼働率への見通しなどから選ぶことが本当の意味での企業の再エネ導入へとつながるでしょう。

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