再エネ普及に追い風?2022年省エネ改正法案とは

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年の瀬も押し詰まった2021年12月24日、再生可能エネルギー業界にとって重要なニュースが流れました。経済産業省が、事業者に再生可能エネルギーの使用目標の設定を義務付ける方針を有識者会議に示したというのです。

この法改正の内容は、2022年の通常国会に提出、2023年4月の施行が予定されています。「今後の省エネ法について」と題し、資料も公開されました*。

矢継ぎ早に行われる省エネ法の改正。一体、今後の改正で省エネ法はどのようにかわるのでしょうか。またそれは、再生可能エネルギー業界へはどのように影響していくのでしょうか。

この記事では、2023年に予定されている省エネ法改正案の概要を解説するとともに、再生可能エネルギー業界への影響を考えます。

*参照: 資源エネルギー庁(事務局資料) 「今後の省エネ法について」2021年12月24日

現行省エネ法とは

改正省エネ法について解説する前に、現行の省エネ法がどのような枠組みになっているのか復習しておこうと思います。

省エネ法は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」*といい、1979年に制定されました。目的は、燃料や熱・電気など資源を有効に活用することです。

石油など、輸入する化石燃料に頼った経済活動を行っている日本で、省エネ法はその時々の課題に応じてたびたび改正されてきました。

直近の改正は2018年に行われたもので、2018年6月13日に交付、2018年12月1日に施行されています。

*参照: e-GOV 法令検索 エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号)


省エネ法の対象事業者

現行の省エネ法では、「エネルギーを使用する者」として「工場等」(工場又は事務所その他の事業場)がメインで想定されています。運輸関係もそれと並んで想定されており、双方とも一定規模以上のエネルギー使用量がある場合は、計画の提出や、報告の義務があります。

省エネ法における事業者の義務

このうちエネルギー使用量が年間1500kl以上の事業者は「特定事業者等」とされ、以下の義務を負うことになっています。

・エネルギー管理者等の選任義務

・中長期計画の提出義務

・エネルギー使用状況等の定期報告義務

また、運輸関係の事業者では、保有車両トラック200台以上等、荷主においては年間輸送量3,000万kt以上の事業者に以下の義務が課されています。

・計画の提出義務

・エネルギー使用状況等の定期報告義務

・委託輸送に係るエネルギー使用状況等の定期報告義務

現行省エネ法の問題点と今後の改正の方向性

太陽光・風力・バイオマスその他の発電方法が急速な拡大を見せる中、2050年にカーボンニュートラルを目指す上で従来の省エネ法では十分でない点が見えてきました。

従来の省エネ法は、1970年代に発生した石油ショックを契機にできたものです。その基本は化石エネルギーの省エネを目指す方向で作られており、これに改正が加えられて、今日に至っています。

再生可能エネルギーがこれだけ普及してきた現状でも、非化石エネルギーを拡大させるための条文がなく、ここを改善することが必要となっていました。

2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標が示されたことを踏まえ、非化石エネルギーの導入拡大を法制化する方向で検討されています。

2023年に予定される改正内容とは

では今後どのような改正内容が検討されているのでしょうか。順番に解説していこうと思います。

エネルギーの定義見直し

現行の省エネ法の根幹を成す「エネルギー」という言葉の定義は、一般的な「燃料・熱・電気」だとされています。成立した時期が古く、風力、太陽光、バイオマスエネルギー等の非化石エネルギーは対象とされていません。

今般の改正方針は、この「エネルギー」という言葉の定義を拡大して、非化石エネルギーも含めるとしています。化石・非化石両方から由来するエネルギー全体で使用の合理化を求める枠組みを作ろうとしているのです。

もう一つ、大きな変更点として、電気の一次エネルギー換算係数の変更があります。省エネ法施行規則の別表第3 * による電力の一次エネルギー換算係数の数字は、火力発電所の熱効率だけから算出されたものですが、これを「全国一律の全電源平均係数を基本とする」としています。

「全電源」ですから、非化石エネルギーによる発電効率も加わった形になってくるのです。


* 参照: e-GOV 法令検索 エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号) 別表第三(第四条関係)

非化石エネルギーへの転換促進策

非化石エネルギーへの転換を中長期的に進めるために、条文が新設される模様です。以下の2点がトピックとなります。

  • 特定事業者等に対し非化石エネルギーへの転換に関する中長期計画と利用状況報告の提出を求める。
  • 系統経由で購入・調達した電気の評価は、小売電気事業者別の非化石電源比率を反映する。

すなわち、序文で述べたように「再生可能エネルギーの使用目標の設定」が義務付けられるのは確実でしょう。

非化石エネルギーへの転換に関する措置のイメージ

非化石エネルギーへの転換を促進するスキームは、特定事業者にとってこれまでの方法と大きな違いのない、やりやすいものとなっています。

報告方法がこれまで提出してきたものと同一の様式の中で行われるとされていますし、最初に国が指針と判断基準を示し、それに基づいた中長期計画を立てることとなりますので、無理のない転換が進行するものと思います。

今後、国がどのような指針と判断基準を示してくるのかが注目されます。

非化石エネルギーの利用割合向上の目標について

目標を立てて非化石エネルギーに転換すると言っても、業種ごとにその事情が異なってきます。

例えば製鉄業などは、高炉にコークスを使わない燃焼方法用いるという、根本的な技術革新が必要となりますが、未だ道半ばであるため、再エネ電気を活用すればすぐに解決するというものではありません*。

このように産業によって事情がさまざまであるため、事業者ごとに異なった目標を設定すべきであるということが議論されており、その目標は国が定める判断基準に従って、定量的で段階的に実行可能な目標を設定してもらうということが議論されています。

*参照:資源エネルギー庁 「水素を活用した製鉄技術、今どこまで進んでる?」

電気の需給状況の変化

省エネ法は、平成25年に東日本大震災を踏まえた電気需要の平準化(ピークカット)がその内容に盛り込まれています。しかしながら、その後、太陽光発電をはじめとする、非化石電源が増加したため、電気の需要と供給がミスマッチする事態が起こり始めています。

現に、日照時間の長い九州においては太陽光発電の割合が高くなっています。真夏の昼間等、太陽光による発電量が増える余り、電気の品質の一つである周波数に変動が生じて、部分的に停電が発生するなどの事故が起こりかねず、出力制御が行われています。

今般の改正においては、電気は需要に合わせて供給することが重要であるとして、「上げDR・下げDR」*と呼ばれる出力制御を含めた、電気の需給調整を行う枠組みを設けることが検討されています。

*参照:資源エネルギー庁 「VPP・DRとは」

まとめ

このように、今度の省エネ法改正では、非化石エネルギーへの転換の計画立案と提出が義務付けられるまでになりつつあります。また、電気の需給バランスをどのようにとっていくのかという課題の解決に向けては、IoT技術を用いた「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」*などの構築も進められています。

今般の法改正によって、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換は、DX化という後押しも加わって、より一層の促進がなされることとなるでしょう。

今後は、もっといろいろな脱炭素関連の新技術が続々と出てくるに違いありません。まさに世紀のビジネスチャンスであり、今後もこの流れについては注目していきたいところです。

*参照:資源エネルギー庁 「VPP・DRとは」


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