2015年のパリ協定以来、世界は脱炭素・再エネ100%に向けて加速している状態です。日本も例外ではなく、2021年度はこれまで以上に再エネ導入・再エネ構築を支援する体制が整ってきています。環境省でも、太陽光発電などの再エネ設備の導入・再エネ構築における補助金事業をいくつか実施しています。
最近注目されている環境省の補助金に「PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」があります。この再エネ促進事業は、補助金の種類が6つに分かれています。どのような内容なのか、どの補助金を活用すべきか気になっている自治体や企業も多いでしょう。
今回は、環境省が提供している太陽光発電の補助金事業6種類をご紹介したいと思います。ぜひ、補助金活用の参考にして下さい。
なお、ここでは「事業再構築補助金」や「税制優遇」などについては解説しておりませんのでご留意下さい。
目次
PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
「PPA活用など再エネ低減~地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」は、再エネ導入によって地域の電力自給力を充実させ、災害時などにおける適応力・回復力を高めるための支援事業です。地域全体におけるCO₂排出量削減を図ることを最終的な目的としています。
以下6つのタイプの補助金があり、各再エネ導入の目的や再エネ設備の種類・導入方法に応じて、活用する補助金の選択が可能です。
- 公共施設の設備制御による地域内再エネ活用モデル構築事業
- 再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
- 平時の省CO₂と災害時非難施設を両立する直流による建物間融通支援事業
- ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
- 再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業
- データセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化促進事業
補助金の募集期間は第1公募は終了、第2公募が原則として令和3年~令和6年までとなりますが、補助金のタイプによっては令和3年度分は終了しているものもあります。応募の際は、各省庁の公式公募をご確認ください。
各補助金の詳細は以下のとおりです。
公共施設の設備制御による地域内再エネ活用モデル構築事業
目的:
- 災害などの緊急時にも強い、地域の再エネ比率の向上を計るために再エネの導入を支援する
- 公共施設や複数の再エネ設備などの調整力・遠隔操作を活用し、地域のエネルギーマネジメント力を高めるための機器・設備の導入を支援する
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
- 地域の太陽光発電、蓄電池、EV、などの再エネ設備・機器を導入こと
- 発電した電力を複数の公共施設に供給すること
- 通信機、エネルギーマネージメントシステム、自営線などを導入こと
- CO₂削減効果が見込まれること
- FTI・FIPによる売電を行わないこと
など、地域内の再エネ活用モデル事業となり得る設備・機器の導入であることが条件となります。
補助金詳細:
- 補助対象経費の2/3
- EV → (蓄電容量kWh × 1/2) × 2万円
- 充放電設備 → 令和3年度CEV補助金の銘柄ごとの補助金交付額と同じ
募集期間: 令和2年度~令和6年度(令和3年度の募集は終了)
募集要項の詳細は以下の参照リンクにて確認できます。
参照:令和3年度 公共施設の設備制御による地域内再エネ活用モデル構築事業 公募概要 – ETA/環境技術普及促進協会
令和3年度の募集は一旦終了しており、令和3年度の第三次補正予算の進捗状況次第で、新たに募集される可能性もあります。上記の補助金の詳細は毎年度の第三次補正予算に応じて決定されるため、必ず募集期間ごとに確認するようにして下さい。
再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
目的:
- オフサイトから運転制御可能となる設備・システムの導入を支援する
- 需要側の再エネ主力化に向けたエネルギーマネージメントの構築を促進する
- 再エネ出力抑制低減に資するオフサイト側の設備・システムの導入を図る
- 離れ島における需要家側設備の群単位の管理・制御技術の向上を図る
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
- オフサイトでの設備・システムの導入により、エネルギーマネージメントが構築されること
- 太陽光発電か風力発電を抑制対象設備とし、出力が10㎾以上2,000kW未満であること
- 需要側の運転制御設備の導入が組み込まれていること
- CO₂削減が見込まれること
- エネルギーマネージメントの制御実績の集計・報告できること
など、エネルギーマネージメントの構築にかかわる設備の導入であることが条件となります。
補助金詳細:
- 補助対象経費の1/2
- EV → (蓄電容量kWh × 1/2) × 2万円
- 充放電設備 → 令和3年度CEV補助金の銘柄ごとの補助金交付額と同じ
募集期間:
- 1次公募 → 終了しました
- 2次公募 → 令和3年7月29日~8月26日17時必着
募集要項の詳細は以下の参照リンクにて確認できます。
参照:令和3年度 再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業 公募概要 – ETA/環境技術普及促進協会
現時点(令和3年7月19日)では1次公募の開催中で申し込むことができます。2次公募も7月後半から開始されますので、申し込む際には必ず募集要項を改めて確認するようにして下さい。
平時の省CO₂と災害時避難施設を両立する直流による建物間融通支援事業
目的:
- エネルギー変換時のエネルギーロスが少ない直流電流の活用により、平時のCO₂削減を図る
- 複数の建物間で直流給電システムを構築することで、一定エリア内におけるCO₂削減と緊急時の避難拠点の形成につなげる
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
- 建物間での直流給電システム構築にかかる設備・機器の導入であること
- 地域における平時のCO₂削減と、緊急時に自立運転可能となるシステムの構築であること
- (設備導入においては)FITおよびFIPによる売電を行わないこと
など、直流給電システムによってエネルギーロスの低減が実現できることが求められています。
補助金詳細:
- 計画策定 → 補助対象経費の3/4
人件費は環境省の算出基準を準用、業務費は委託料の単価として国土交通省の単価基準を準用。
- 設備導入 → 補助対経費の1/2
令和2年度に本事業で計画策定を行っている場合は2/3となる。
募集期間:
- 第1次公募: 終了しました
- 第2次公募: 令和3年7月9日~7月29日17時必着
募集要項の詳細は以下の参照リンクにて確認できます。
参照:令和3年度 平時の省CO₂と災害時非難施設を両立する直流による建物間融通支援事業 公募概要 – ETA/環境技術普及促進協会
第2次公募が開催中です。ただし、予算額に達した場合は中途で公募が停止される可能性もありますので必ず申し込む際には募集要項を確認するようにして下さい。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
目的:
- 蓄電池を導入した方が、導入しない時よりも経済メリットがあるストレージパリティを目指す取り組みを支援する
- CO₂削減と防災を兼ねた、太陽光発電と蓄電池の組み合わせによるオンサイトPPAモデルなどの設備導入の促進
- オンサイトPPAモデル導入の場合は、補助金額の一部を需要家に還元することによって、導入コストの低減につなげる
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
- 太陽光発電と蓄電池を組み合わせた設備の自己所有、オンサイトPPAモデル、ファイナンスリース契約であること
- 太陽光発電の出力容量が10kW以上(戸建て住宅を除く)、自立運転が可能であること
- 原則として自家消費を目的とし、FIT・FIP制度による売電を行わないこと
- CO₂削減が見込めること
- 個人の戸建て住宅における太陽光発電設備の自己所有ではないこと
など、おもにオンサイトPPAモデルやファイナンスリースを促進させる事業であることが重視されています。
補助金詳細:
- 太陽光発電(自己所有・ファイナンスリース) → 出力kW × 4万円/kW
- 太陽光発電(オンサイトPPAモデル) → 出力kW × 5万円/kW
- 蓄電池(産業用)→ 出力kW × 6万円/kW
- 蓄電池(家庭用)→ 出力kW × 2万円/kW
- EV → (蓄電容量kWh × 1/2) × 2万円
- 充放電設備 → 令和3年度CEV補助金の銘柄ごとの補助金交付額と同じ
- 太陽光発電設備の設備工事費は工事費にかかわらず一律10万円
募集期間:
- 第1次~第3次 → 終了しました
- 第4次 → 令和3年7月5日~7月30日正午必着
- 第5次 → 令和3年8月9日~8月31日正午必着
- 第6次 → 令和3年9月6日~9月30日正午必着
募集要項の詳細は以下の参照リンクにて確認できます。
参照:令和3年 ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 – 環境イノベーション情報機構
現在募集中です。予算額に達した時点で募集は締め切りとなりますので、必ず申し込む際には募集要項を確認するようにして下さい。
再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業
目的:
- 建物の屋根・遊休地以外での太陽光発電の導入を促進させる
- 自家消費型の太陽光発電や蓄電池等の活用を支援する
- オフサイトコーポレートPPA、カーポート活用など新しい手法による再エネ設備の導入を促進・支援する
- 長期的かつ経済的な再エネ活用を目指す
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
オフサイトコーポレートPPAによる太陽光発電事業は令和3年度分は7月9日にて一旦終了しています。太陽光発電設備の設置箇所拡大(カーポートの設備導入)導入は現在募集中ですので、ここではカーポートの補助金受理の条件を挙げておきます。
- 建物の屋根や空き地以外を活用した太陽光発電の導入であること
- 平時において50%以上の自家消費が可能であること
- パワーコンディショナーの出力合計が5kW以上であること
- FIT・FIP制度の認定を受けないこと
補助金詳細:
- 補助対象経費の1/3
募集期間:
令和3年度~令和6年度までとなり、導入形態によって各補助金の募集期間が異なります。
太陽光発電設備の設置箇所拡大(カーポートの設備導入)の募集期間は以下の通りです。
- 1次公募 → 終了
- 2次公募 → 終了
- 3次公募 → 令和3年7月16日~8月10日17時必着
太陽光発電設備の設置箇所拡大(カーポートの設備導入)カーポート設備導入の募集要項は以下から詳しく確認できます。
その他募集要項は参照リンクから詳しく確認できます。
参照:再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業 – ETA/環境技術普及促進協会
予算額に達した場合は、次期公募は停止となる可能性があります。必ず申し込む際には募集要項を確認するようにして下さい。
データセンターの脱炭素化・レジリエンス強化促進事業
目的:
- データセンターなどの再エネ・省エネの活用により、デジタル分野においてもゼロエミッションの実現を図る
- 地方分散立地推進や再エネ活用による、緊急時への適応力を高めることでデジタル分野の気候変動対策を支援する
- 社会全体での再エネ活用ニーズの向上、ESG投資への参入を促進・支援する
対象者:地方公共団体、民間事業者・団体
補助金受理の条件:
補助金受理の要件は大きく3つに分かれています。
- 再エネを活用したデータセンターの新設または移設
- ゼロエミッションへのデータセンターの設備改修
- データセンターでの再エネ活用ニーズ・ESG投資への参入に関する調査
など、データセンターにおける再エネ導入であることが求められています。
補助金詳細:
- 間接補助事業 → 補助対象経費の1/2、2/3
募集期間:
原則として令和3年度~令和6年度
現時点では令和3年度に関する募集要項はまだ公表されていません。募集の概要は以下から確認できます。
参照:PPA活用など再エネ低減~地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
補助金を有効活用しよう!
いざ再エネ導入を検討した時に、気になるのが導入コストです。今回ご紹介したような環境省の補助金を活用することで、初期費用を最小限に抑えることが可能となります。
「PPA活用など再エネ低減~地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」は6種類に分かれており、各種補助金の募集要項も異なり、詳細が若干複雑でわかりづらいのが現状です。
導入にあたっては、補助金のことを熟知した設備会社やPPA業者などの専門業者に相談しながら進めていくことで、的確な補助金の選択や経済効果が高い経費計上が実現できるかと思います。
補助金の支給によってコスト削減が可能となるこの機会に、ぜひ、再エネ導入を具体的に進めていきましょう。