令和4年の脱炭素を取り巻く投融資の動きを解説!

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投融資先を含めた温暖化ガス排出量の実質ゼロをめざす金融機関の国際的な融資連合GFANZが、脱炭素に今後30年で100兆ドルを投じる方針を決めました*。


100兆ドルという巨大な民間の金融機関が持つ資金が脱炭素に取り組む企業に振り分けられる方針は、非常に投融資において大きな意義を持ちます。また、GFANZに日本からは 3メガバンクを筆頭に18社の金融機関がメンバーになっているため、日本にも影響があります。

そこで今回は、世界の金融機関が集まるGFANZの決定によって世界ならびに日本の脱炭素化や脱炭素に取り組む企業の投融資に与える影響について解説します。

*参照:日本経済新聞-「脱炭素に1京円強 金融機関融資連合、投融資で変革促す

COP26とGFANZ

COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が2021年11月13日に合意文章を締結して閉幕しました。今回の会議では、長期目標に関するコミットメントや大きな枠組み設定での進展がみられた一方で、具体策に関する合意形成が難航したという評価があります*。

*日本総研-『COP26の成果と今後の課題―ロードマップや新興国支援の具体化が急務―

具体的な成果

21世紀末の気温上昇幅が1.8℃まで縮小したとするIEAの試算をうけて、さらに『1.5℃以内に抑える努力を追求』とする温室効果ガスのさらなる削減に向けた合意を行いました。また、インドやロシアなどの温室効果ガス排出が多い新興国が脱炭素目標を宣言したことや、 新興国支援のための先進国による資金支援の増額などが決定しました。

そして、民間の取り組みとして、グラスゴー金融同盟(GFANZ)の正式発足と、それにあわせて今後30年で100兆ドルの脱炭素資金の供給がコミットされました。

GFANZ

「GFANZ(ジーファンズ)はネットゼロのための資金を提供する」。COP26の場では、GFANZ創立者であるイングランド銀行(英中央銀行)のカーニー前総裁によるこの断言がありました*。

GFANZは世界の金融機関においてネットゼロへの移行促進を目的に創立され、450社以上の参加企業の金融資産合計は130兆ドル(約1京5000兆円)となっています。そのため、“今後30年間で100兆ドル以上必要と推計される気候変動対応に必要な資金を提供できる”規模があると言われています*。

*日本経済新聞-『グリーン金融 拡大の時』

日本への影響

GFANZが100兆ドルの資金提供を行うことは、脱炭素に取り組む日本の中小企業へ与える影響も小さくありません。日本からもGFANZには多くの金融機関が参加しています。

GFANZへ参加する日本の金融機関

GFANZへ参加する日本の金融機関は、三菱UFJ/三井住友/みずほの3メガバンクの他に日本生命や第一生命などの保険会社に加え、野村アセットなどの資産運用会社など合計18社あります。

GFANZに参加する金融機関には、投融資を排出量削減につなげることが必須となっています。参加機関は、『今後10年で50%前後の排出量の削減』や『計画進捗やファイナンスによる排出量の年次開示』が求められます。

そのため、参加金融機関は投融資を脱炭素につなげることが必須となり、投融資を受ける企業にも脱炭素への取り組みとその計画の立案・実行ならびに開示の圧力が高まることが予想されています*。

*日本経済新聞-『脱炭素に1京円強 金融機関融資連合 投融資で変革促す

実際の取り組み

金融機関の中で、取り組みが最も進んでいるのは資産運用会社です。日本勢においては、アセットマネジメントOneがその投資の振り分け方針の変更を開示しています。

一方で、GFANZに参加する中で金融資産を最も保有しているのは、銀行です。

銀行の取り組みは、資産運用会社の取り組みほど進んでいません。なぜならば、銀行はすでにその金融資産を企業などへ融資しているからです。既存の融資先企業が現状として脱炭素への取り組みをしていないため融資を引き揚げる、ということは現実的でありません。そのため銀行は、既存の融資先企業へ脱炭素の取り組みを求めていく対話やバランス感覚を必要としています*。

*日本経済新聞-『脱炭素に1京円強 金融機関融資連合 投融資で変革促す

政府の対応『グリーンイノベーション基金』

政府も脱炭素への取り組みに資金を投じます。経済産業省は20年度『グリーンイノベーション基金』の予算を確保しました。これは、2020年以降の10年間で総額2兆円を幅広い脱炭素プロジェクトに限定して出資していくという取り組みです。

まとめ

日本を含めた世界の動きが、脱炭素とそれに伴う投融資を活性化しようとしています。そのため、脱炭素化に取り組む企業や団体にとって資金調達がより行いやすい環境となっています。むしろ、今後金融機関から資金調達をしようとする場合には脱炭素化への取り組みが必須となるといえる社会に向かうのかもしれません。

これから投融資を受けようとする企業は、資金調達方法の検討と共に自社の脱炭素の取り組みをどのように進めていくのかを検討していく必要性が増したと言えます。

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