2021年から電気代が高くなる傾向が続いています。2022年7月28日には電力大手より9月からの電気料金を値上げするという発表がありました。
生活をする上で必要不可欠な電気料金が上がるということは、家計はもちろん、企業の業績にも直接的に影響するので、経済へのダメージは小さくありません。
ウクライナで戦争が発生している影響であることはなんとなくわかりますが、具体的にその直接的な原因を探ると、どういうことになっているのでしょうか。
この記事では、日本における電気代高騰の直接的な原因を3つ挙げ、それぞれについて解説していきます。
参照:【速報】夏の電気代1年前の3割増し家計に響く…9月の電気料金、大手2社値上げ( FNNプライムオンライン)
目次
原因その1:「燃料調整費」が高騰している
電気料金明細の請求予定金額を見ると、電気料金の内訳が書かれています。「基本料金」は、契約しているアンペア数によって決まり、定額料金が毎月発生する仕組みになっています。
内訳には「燃料調整費」という項目もあり、火力発電の燃料価格の変動を反映する仕組みになっています。燃料とは、原油・LNG・石炭であり、これらの価格は絶えず変動しています。 市場動向や世界情勢は企業努力で対処できるものではなく、電力会社は燃料価格高騰によるリスクを抑制するために、こうして調達コストを電気料金に反映させているのです。
この燃料調整費、実は2015年夏ごろから2021年の冬まで「マイナス」でした。電気料金は7年足らずの間、実質的に割引になっていたのです。
その燃料調整費は、2021年冬にマイナスからプラスに転じました。2022年4月には北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・沖縄電力の5社であらかじめ設定してある上限に達しました。
なかには、燃料調整費の上限を撤廃した会社も出てきています。
燃料費高騰の背景としては、新型コロナウイルス感染拡大に戦争の影響が重なったためと考えられます。もう一つ重要な点としては、カーボンニュートラルを目標とした世界的な動きの中で、化石燃料の消費が急激に下がり始めたことです。これによる値下がりを警戒するあまり、OPECなど産油国が増産を控えていることも原因 のひとつと考えられています。
参照:燃料及び電力を取り巻く最近の動向について(資源エネルギー庁2021年10月26日)
参照:電気代が高い!2022年のいま高騰する原因を解説します(エネマネX)
原因その2:「再エネ賦課金」が高騰している
電気料金を構成するもう一つの項目に「再エネ賦課金」があります。再エネ賦課金は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といい、国が実施している再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の費用を利用者が負担するための料金制度です。
再生可能エネルギーが普及し始めた当初は、電力会社の買い取り価格が低く、再エネに取り組もうとする事業者のメリットは小さいものでした。これでは再生可能エネルギーは普及しないため、国が電力会社に対して再生可能エネルギーで生み出された電力を買い取る義務を課し、買取資金の調達のために始まったのが再エネ賦課金です。
東京電力の発表によると、再エネ賦課金の単価は、2021年9月時点で3.36円/kWhでしたが、2022年5月分から2023年4月分まで3.45円/kWhとなることが発表されています。年々高くなってきているのです。
再エネ賦課金は、電力会社の買取費用等に応じて交付される交付金の見込額と電力会社等の想定供給電力量等をもとに、国が定めています。電力会社の買取費用が増えれば増えるほど高くなっていく仕組みになっており、節電努力とは連動しない部分になります。 カーボンニュートラルへの取り組みが進展すればするほど上がっていくことが予想されるのが、再エネ賦課金ということになります。
参照:賦課金について(TEPCO東京電力ホールディングス)
原因その3:「市場価格」が高騰している
電気の販売事業をする会社が電力を調達するための方法には以下の2つがあります。
- 自社で発電設備を設けて発電する
- 電力卸売市場から調達する
自社で一定以上の規模の発電設備をもって十分な量の発電ができる事業者は限られていますので、新電力のほとんどの事業者は電力卸売市場から電力を調達しています。
電力卸売市場を運営している一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)の記録をみると、2021年の10月ごろから平均取引価格は急騰していることが分かります。年度末の平均価格では年度初めの4倍弱までになっています。
このように、以前は10円未満で取引されていた電力は、2021年冬に入る頃から高騰し、2022年度に入ってからは20~30円前後で取引されています。電力自由化で多く立ち上がった新電力各社のなかには、サービスを停止したり、事業から撤退したりする会社も相次いでおり、どうにか続けるにしても大幅に値上げをせざるを得ない状況になっています。
国際情勢や資源価格の高騰はこのように市場価格に影響を与えます。ウクライナの問題や燃料価格の高騰が続く限り、市場価格の高騰は収まらないでしょう。
今後の電気代と私たちの生活は?
これまでご紹介してきたように今回の電気代の高騰は、国際的な複数の要因によるところが大きく、これらが一つでも解決に向かわなければこの状況が続くでしょう。
今回の電気代の高騰は、再生可能エネルギーの普及促進もその遠因になっています。カーボンニュートラルにかかる期待は大きいのですが、持続可能な世界を構築していくにはこれくらいのコストがかかるものと、覚悟しなければならないのかもしれません。