2021年9月8日に、Amazonと三菱商事が集約型太陽光発電プロジェクトにおけるコーポレートPPA(電力購入契約)を締結しました。
このニュースは、再生可能エネルギーへの取り組みとしては非常に大きなニュースです。そこで今回は、コーポレートPPAやビジネスだけでなく、環境変動対策にも力を入れるAmazonの動きについて解説します。
目次
集約型太陽光発電プロジェクトにおけるコーポレートPPA
Amazonと三菱商事がコーポレートPPAの締結により、三菱商事の電力小売事業子会社(MCリテールエナジー)が運用する首都圏と東北地方で開発中の450拠点を越える太陽光発電設備が2022年以降から順次稼働していく計画です。これは22メガワット(MW)の発電能力を有する、大規模プロジェクトです。
このコーポレートPPAは、集約型太陽光発電プロジェクトとして日本初であり最大になるため、再生可能エネルギーの利用拡大に大きな道筋をつくると注目されています。
出典:Amazonと三菱商事、日本初の再生可能エネルギー購入契約を締結
日本の再生エネルギー生成量との比較
22MWの再生可能エネルギー量がどれほど大規模なのかは、過去の日本の再生可能エネルギーへの取り組みと比較しても明らかです。
メガソーラーや太陽光発電など、他の日本での設置例
新潟海辺の森ソーラーパーク
新潟市などの協力を得て進められている国内の大規模メガソーラー(太陽光発電所)となります。
容量:14MW
出典:日経XTEC「新潟県最大級の14MW」
KIXメガソーラー
関西国際空港を運営する新関西国際空港株式会社が進める空港島内の広大なスペース合計119,700㎡を活用して設置されています。
容量:11.6MW
出典:ソーラーフロンティア株式会社HP
軽米西ソーラー発電所
東京ドーム33個分と言われる広大な場所を活用している国内最大規模の太陽光発電所になります。
容量:48.0MW
出典:株式会社レノバHP
今回のAmazonと三菱商事の取組が集約型太陽光発電プロジェクトでありながら、上記の発電所に匹敵する規模であることがお分かり頂けたでしょうか。
GAFAの1角 Amazonとは
GAFAとは、アメリカを代表するIT巨大プラットフォーマー4社(Google、Amazon、Facebook、Apple)の頭文字を並べた造語です。Amazonは、その巨大プラットフォーマーの1社になります。
Amazonの事業規模
Amazonはe-コマースにおける世界的リーディングカンパニーです。ただし、e-コマースに留まることなく、仮想サーバを代表する100を超えるクラウドコンピューティングサービスの総称であるAWSなど異なる事業分野でも大きな成長を続けています。
その結果、Amazonの2020年の売上高は3860億6400万ドル(前期比+37.6%)、純利益は213億3100万ドル(同+84.1%)と売上・利益共に増収増益となっております。
Amazonの再エネ戦略とその規模
Amazonは、再生可能エネルギー調達企業としても世界の先駆者となっています。
Amazonは現在、全世界で合計206件の再生可能エネルギー・プロジェクトを進めており、その内訳は71の実用規模の風力および太陽光プロジェクト、135基の世界各地の施設や店舗の屋上に設置される太陽光発電システムとなっています。
Amazonによる全世界での電力生産能力はすでに8.5ギガワット(GW)に達しています。これは、当初目標であった2030年よりも5年早い、2025年までにAmazonの事業に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うべく歩みを進めています。
またこれらの再生可能エネルギーは、Amazonが販売するスマートスピーカーシリーズであるEchoデバイス*¹のすべてが消費する電力に相当するクリーンエネルギーを生産するという、Amazonの公約「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)*²」実現に繋がっていきます。
出典:Amazonが世界各地で再生可能エネルギーへの大規模な投資を実施
*¹Echoデバイスに関する詳細はこちらで確認できます。
*²The Climate Predgeに関する詳細はこちらで確認できます。
最新の再エネプロジェクト
4月19日に9つの新しいエネルギー・プロジェクトがAmazonから発表されました。この新規プロジェクトによって、Amazonはヨーロッパ最大の再生可能エネルギー調達企業となりました。
その再生可能エネルギー容量は2.5GWを超え、200万世帯以上の家庭に1年間電力を供給するのに十分な量に相当します。
9つの新しいエネルギープロジェクトの代表的なプロジェクトは以下になります。
✔︎Amazon初となるエネルギー貯蔵を組み合わせた太陽光プロジェクト:100MW規模
✔︎カナダにおけるAmazon初の再生可能エネルギー・プロジェクト:80MW規模
✔︎英国内で最大規模の企業による再生可能エネルギー・プロジェクト:350 MW規模
✔︎米国での新規プロジェクト:400MW規模
✔︎スペインとスウェーデンにおける追加投資:428MW規模
出典:Amazonが世界各地で再生可能エネルギーへの大規模な投資を実施
コーポレートPPAと世界と日本での広がり
“コーポレート PPA(Corporate PPA)は、企業や自治体などの法人が発電事業者から自然エネルギーの 電力を長期に(通常 10~25 年)購入する契約である。PPA は電力購入契約(Power Purchase Agreement) の略で、通常は小売電気事業者が発電事業者から電力を調達するために締結する。”
今までの日本の発電事業者は、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取)の利用が一般的でした。つまり、発電した再生可能エネルギーを電力会社に売電をして収益化していました。
FIT制度には、『買取価格が一定』という発電事業者に大きなメリットがあります。一方で、電気購入者からすると購入する電気料金には電力会社分の収益が含まれることになるため、コストが最小化できない課題がありました。
コーポレートPPAを発電事業者と電気購入者が直接契約することで、発電事業者は継続的かつ安定的な収益が計算でき、電気購入者はコストを最小化を目指せます。
特に、資金力が大きい大企業などが発電事業者とコーポレートPPAを締結する動きが増えています。
世界と日本での広がり
✓世界の広がり
2019 年に世界各国で新規締結したコーポレート PPA の電気量は19,500MWになります。2017 年から 3 倍以上の規模で成長しており、コーポレートPPAの累積電気量は2019年時点で50GWを超えています。その利用も全体の約 8 割を占める米国以外にも、 欧州やアジア・太平洋でも広がりを見せ始めています。
世界的には、地球環境への関心の高まりと、太陽光発電など再生可能エネルギーのコスト低下が大きな要因となります。
再生可能エネルギーに関わらないことは、地球環境にも電気コストの削減にもアクションを起こさない企業や組織としてみられるリスクすら発生しています。
✓日本での広がり
日本でのコーポレートPPAの広がりは、先行している欧米企業の活用に支えられる形で今後広がっていくことが期待されています。
再エネ調達の重要性は高まりを見せており、再エネ電力の利用は企業にとって今後さらに重要なトレンドになっていきます。その中で、コーポレートPPAは企業自ら再エネの発電所の開発や維持を支えるモデルとして注目されていくことは間違いありません。
今後のPPA
Amazonと三菱商事のコーポレートPPAは、日本における太陽光発電を代表する再生可能エネルギーの調達方法やビジネスモデルに大きな影響を与える先駆け的な契約と言えます。
これをきっかけに、日本でも再生可能エネルギーへの関心が一層高まり、再生可能エネルギーの発電に直接的な働きかけが増えることでその発電量が増えることを期待しています。