サプライチェーン全体での再エネ導入が意識される中、太陽光発電を導入したくても、立地条件などから環境的に無理だとあきらめている企業もあるようです。
太陽光発電の設置が難しい環境にあっても、遠隔地に太陽光発電を設置することで、離れた地域の自社建物や工場で自家消費できます。遠隔地の太陽光発電から電力を他の場所へ送配電する方法は「自己託送モデル」と呼ばれ、近年注目されている再エネ導入方法の1つです。
今回は、太陽光発電の「自己託送モデル」について詳しく解説していきます。ぜひ、選択肢の1つとして参考になれば幸いです。
目次
太陽光発電の自己託送モデルとは?
- 「屋根が狭い」
- 「日当たりが悪い」
- 「十分な敷地がない」
- 「建物が古いので不安」
- 「瓦屋根なので設置したくない」
などと、SDGsやREアクションへの関心を持ちながらも、太陽光発電を導入が実現できずにいる企業や自治体もあるでしょう。
建物の環境的な理由から太陽光発電の導入に悩んだ時に、考慮したいのが「自己託送モデル」です。
自己託送モデルとは?
自己託送モデルとは、
遠隔地に設置した太陽光発電の電気を電力会社の送配電ネットワークを利用し、自社の建物やビル、工場に電力を供給することをいいます。
自己託送で電力を送配電するためには、電力会社と託送契約を結ぶ必要があります。東京電力や中部電力などの大手電力会社や一部の新電力会社にて「電力託送サービス」が提供されています。
電力託送サービスの種類
電力会社が提供する「電力託送サービス」は大きく4つの種類があります。
接続供給サービス
接続供給サービスとは、契約する電力会社のエリア内で託送するサービスです。契約者から一旦受け取った電気を、別の場所の同じ契約者に送配電します。
振替供給サービス
振替供給サービスによる送配電は異なる電力会社のエリアをまたいだ託送サービスです。
電力会社Aと振替供給サービスを結んだ契約者から、電力会社Aの供給外地域で使用予定の電気を受電し、受電場所以外の会社間連系点において、契約者に受電した電気量に相当する量の電気を供給します。
発電量調整供給サービス
発電量調整供給サービスとは、基本の託送サービスに追加で契約するオプションです。一定の電力供給量をあらかじめ申し出ておく託送方法になります。自己託送では「送電量計画」として提出が義務づけられています。
需要抑制量調整サービス
需要抑制量調整サービスとは、節電することで生じる余剰電力を売電したい時に使えるサービスです。ネガワット取引とも呼ばれるもので、余剰電力を小売事業者や別の契約者に売電・託送する時に使います。
地内振替と中継振替
自己託送の際に利用する「振替供給サービス」は、「地内振替」と「中継振替」と2つのタイプがあります。
送配電に利用する配電線の所有者がどの電力会社になるのかによって分けられています。
地内振替とは
地内振替とは、契約する電力会社の供給エリア内で発電した電気をエリア外に託送するタイプです。この場合、電気をエリア外に託送する時点で他社電力と振り替えられます。
中継振替とは
中継振替とは、契約する電力会社のエリア外で発電した電気を、さらにエリア外の事業所に託送するタイプです。この場合、電力会社が電気を受け取る時と託送する時に電力の振替が行われます。
つまり、地内か中継か契約形態が変わるだけで、日本国内であればどの地域であっても遠隔地で発電した電気を「自己託送」で他の場所でも活用することが可能なのです。
自己託送/託送契約の条件
自己託送(振替供給)にて電力会社と託送契約を結ぶにあたって、いくつか条件があるので確認しておきましょう。
- 太陽光発電所と需要場所名義が同じ、またはグループ会社であること
- 電気小売り事業者でないないこと
- 託送先の余剰電力は売電することができない
- 託送料金は二部料金または完全従量料金との選択制
- 送電量計画を提出する必要がある
- 発電量が送電量計画を下回った場合はペナルティが課される(インバランス料金)
グループ企業内で電源を融通するイメージ
遠隔地に太陽光発電を設置して自己託送することで、1か所で創った電気をグループ全体で使用できます。
ただし、自己託送にてCO₂削減・再エネ導入が実現できる一方、計画通りに発電しなかった場合にはペナルティが課されてしまうというデメリットもあります。
自己託送の電気料金
自己託送で利用する電力の料金は、契約する電力会社・契約内容によって異なります。
例えば、東京電力の自己託送の料金は以下の通りです。
東京電力
託送契約を結ぶにあたっては、契約内容・料金体系をしっかり確認するようにして下さい。事前に電力会社に問い合わせてみましょう。
遠隔地に太陽光発電を設置する方法
ひとことで、遠隔地に太陽光発電を設置するといっても、具体的にどうすればよいのかイメージできない方もいるでしょう。最後に、遠隔地に太陽光発電を設置する方法をいくつかご紹介しておきたいと思います。
自社保有の敷地・遊休地を活用
一番理想的だといえる方法は、すでに自社で保有している敷地・遊休地に太陽光発電を設置する方法です。支店やグループ会社の工場、駐車場、畑、倉庫、使途が決まっていない会社名義の土地や建物など、太陽光発電に最適な場所があれば、設備の導入を検討してみましょう。
土地付き太陽光発電を購入する
次に考えられるのが、投資物件として販売されている「土地付き太陽光発電」を購入する方法です。国内各地の大小様々な物件があります。土地購入型、土地レンタル型、一括型、ローン型、分譲型など予算や条件に合うものを探すことができます。
ネット検索にて簡単に情報収集できますが、慎重に信頼できる業者を選ぶことが大切です。
土地をレンタル・太陽光発電をリース
初期費用を最低限に抑えたい場合は、土地をレンタルして、太陽光発電をリースで設置する方法もあります。一般的に10年間がリース期間となり、リース期間が終了すると完全に所有権が譲渡されます。
ただし、リース期間中の解約はできないので注意して下さい。
税制優遇や補助金を活用しよう
世界的な規模でゼロ・エミッション、再生可能エネルギー100%の動きが強まる中、国の政策として太陽光発電の導入には、税制優遇や補助金が活用できます。
- 東京都「再エネ増強プロジェクト事業」
- 神奈川県「自家消費型太陽光発電導入補助金」
など、導入の時期や地域によって活用できる制度が異なりますので、自治体や経済産業省の情報を調べてみましょう。
太陽光発電導入における税制優遇や補助金に関する情報は、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせて参考にして下さい。
まずは専門業者に問い合わせることから
太陽光発電を遠隔地に設置して自己託送できるとはいえ、何処に設置すべきか、土地はどうするのか、太陽光発電パネルはどれくらい必要なのか、疑問に思うことも多いですよね。
何から始めていけばよいのか、太陽光発電導入の手順がわからずに戸惑うものです。
太陽光発電の自己託送の第一歩は、まずは専門業者にメールや電話で1つ質問をしてみることをおすすめします。例えば、「御社では自己託送の活用事例はあるか」「太陽光パネルがどれくらい必要なのかわからない」「概ねの費用を知りたい」など。問い合わせたからといって、その業者に決める必要はないので安心です。
1つの質問が次の質問をつくり、何が疑問なのか、次に何を聞くべきなのか漠然としていた計画が次第に具体化してくるものです。業者に問い合わせることで、その業者の対応や質もわかります。また、業者によっては「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を提供する業者もあり、活用することが可能です。
太陽光発電の専門業者が決まれば、自己託送の契約方法も相談できます。先に設備、設備が決まってから電力会社との契約という流れです。
複数の業者に問い合わせて比較しながら、各自に合った業者・信頼できる業者を探していきましょう。